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発注者と設計者がケンカする!?

ご安心ください、取っ組み合いのけんかはしません。笑
罵声の飛び交うケンカもしません。笑

ただ、多くのデザイナーにとって永遠の課題であり、どう折り合いをつけるかどう説明すればよいか、どういうプロセスを経ればいい方向へ進んでいくかどういうバランスにすればいいか、ということがとても重要なことだと思っています。


「みんなのいえ」のケンカ話

「みんなのいえ」という映画をご存じでしょうか。(※ネタばれ注意)

唐沢寿明・ 田中邦衛 主演のいえをつくる映画

夫婦が新築をする際に、設計はインテリアデザイナーの友人に依頼し、工事は大工の父親に依頼するのですが、海外の考えを取り入れ型破りな設計者と、昔気質の大工の意見が正面からぶつかり合い、建て主が間に入って仲裁に入る、見ていてヒヤヒヤする映画となっています。

最終的には、少しずつお互いが歩み寄っていき、設計者はちょうどいい折り合いを探し大工は設計者の理念・大事にしているところに耳を傾けるようになる。他の大工が最後に放った言葉が「あんたのことは好きじゃねぇけど、この家は好きだ」と言って映画が終わるのですが、設計者側の視点で見てる私としては「良かったねぇ」と自分事のように嬉しくなりました。

といっても、映画の中の設計者は色々誇張されていて、さすがにあんなに傍若無人なデザイナーはなかなかいないです笑。




従順な設計士と、変えてくる設計士

ケンカの話ではないのですが、もうひとつ、Noteで出会った記事をご紹介します。

詳細は、実際の記事を読んでいただきたいのですが、本当にざっくり要約させていただくと、「設計2社で比較、A社は施主の要望通りに作ってきた。B社は施主の描いたイメージはあまり見ようとせずに、希望をヒヤリングして要点を拾って、施主のイメージとは違うものを作ってきた。結果B社に依頼したいということになった。」

「みんなの家」とは正反対に、従順な設計者がいいわけではない、という例としてご紹介させていただきました。



塩加減に口出しするお客さんはいない?

もうひとつ、Threadsで出会ったデザイナーさんの言葉をこちらでご紹介します。

https://www.threads.net/@sanowataru/post/C3rpSWtL41E

飲食店では、出されたものを食べるが

時々、どこのデザイン事務所と仕事をしても上手くいかないんです。。と言うクライアントがいて、弊社でお願いします!という事案がある。話を聞くと、そこはデザインを生業にしてる会社じゃないですね! とか、素人すぎてデザイナーじゃないので。。。とかもあるのですが、 実は一番多いのはクライアント自身がデザインをしちゃうこと。弊社の場合は、もしクライアントが修正の段階でロゴをもう少し右で!とか「レイアウト」をしてきた段階で一度作業を止めて話をします。その時点で弊社のデザインではなく、クライアントがしたデザインになるのでどう転がっても責任が取れなくなるためです。これってとても大事なことで、逆で考えると、例えばクライアントが飲食系の場合だとすると、うちが先方の料理の味をもう少し塩味を強く!とかこのケーキのいちごは要らないですね!とか言っちゃうことと同じだと思う。言わないでしょう。。それぞれの専門分野があり、お互いを尊重しないと、 良いデザインは生まれないと思います。なので制作前のすり合わせがとても大事ですね。

ちょうどこのタイトルで記事を書こうとしているときに、上の二つの記事・投稿に出会ったのですが、偶然なのかアルゴリズムなのかわかりませんが、すごいです。笑

見出しが「塩加減に口出しするお客さんはいない?」ですが、飲食店だとたかだか数千円です。食べてみて好きじゃなかったら、他の店に行くでしょう。建築デザインやインテリアは安くても数百万から、上は何億にもなります。「初めての店に行って、まずければ他に変えればいいや」とは簡単にできないのが建築設計なので、設計事務所にとって実績・実例はとても大事ということを、再度実感しました。ただ、実績・実例をつくっても、用途によっては他の方に見せたり、体験してもらうことができない、というのもハードル。だからこそ、つくるプロセスにおいて、お互いを尊重するコミュニケーションが大事になってくる、ということですね。

「みんなのいえ」のように、つっぱねる設計士でもダメだし、従順なだけの設計士でもダメだし、その間をうまくバランス取れる設計士がいい・・・と、当たり前の結論だけでは終わらせません!もう少しまとめてみます。




委託者・受託者の双方において大事なコト

一言でまとめるのは、とても難しいのですが、自分に言い聞かせるつもりで、できるだけ簡単にまとめてみたいと思います。

  1. 「何が要望なのか」について「発注者の想い」が大事(スタート)

  2. 「発注者の想い」は、発注者が最初にイメージしたカタチとは限らない。カタチにする作業について、プロを信頼してほしい。※ただ、結果、最初にイメージしたカタチかもしれないので、その可能性は否定するわけではない。(役割分担)

  3. 設計者は「発注者の想い」を「よく」聞いて「内なる願い」を引き出し、要望の優先順位をわかりやすく共有する(要望のまとめ、リスト化)

  4. カタチにする作業はプロを信頼してほしいと書きつつも、「プロはすべてを説明し、理解してもらえるという傲慢な考えは捨て」て、時には折り合いをつけることも大事(道や答えは1本ではない)

  5. 折り合いの中から、新しい発見や新しい道につなげる、折り合いは決して妥協ではなく、次の道へつなげる新しい選択肢だと思って、もう一度プロは検討する。そして、発注者はプロに検討させる。この時、発注者は自分でできるだけカタチをつくらない。要望をもう一度つたえることが大事(再出発:2・3・4の繰り返し)

  6. 最後は「お互いを尊重しないと、よいデザインは生まれない」(コミュニケーション)


B to B の目標は、誰かに共感されるモノづくりがほとんど

BtoBの設計業務の場合、ビジネスでは多くの利用者を相手にするものなので「人に共感される何かを目標にものづくりを進める」前提があるため「カタチをまとめていく作業であったり、詳細な納まり等」は設計者に任せて、逆に、「大きな枠組み、コンセプト、方向性」を発注者がじっくり検討し判断する、という素地が出来上がっているケースが多いです。互いを尊重し、役割分担がうまくいっているケースとも言えます。


住宅設計は、その他モノづくりとはまた違う目標がある

一方で、住宅設計の場合は「人に共感される何かを目標にものづくり」ではないケースもあり、「一個人の希望・要望をカタチにすることが目標」の場合もあるので、上記の1~6のプロセスが尚更重要になってくると思っています。設計者は、発注者の想いにより耳を傾け、要望を抽出していく。

場合によっては、設計者は本当に作図というお膳立てだけでいい、というケースもあるかもしれません。「ここはパリで買った壁紙で、ここはイタリアで買ったカーテンで、ここはドイツのキッチンで」等、もうそれ以外の答え、要望がないケースでは、それが答えでいいんです。

でも、パリで買った壁紙を使うことよりも優先順位の高い要望があった場合には、その優先順位にあうようなカタチを提案するのが、設計者の仕事だと思っています。

そんなこんなで、自分のためにまとめた記事ですが、コミュニケーションが一流の設計者になることを目指して、精進します!



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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