プレゼンテーション1

私は、無双が好きなんだ 「ゴルゴダ」を読んだ

以前、北海道に行ったときに、千歳空港の本屋で平積みになっていた本が妙に気になった。
実はその頃、読書から興味が離れていた。
他にもいくつか仕事で読まなければならないものが溜まっていたので、
購入せずにスルーしたが、妙に気になった。

読書熱が再燃してくるとともに何か面白い小説はないかと考えるようになり、記憶の片隅にあったあの本を読もうと思ったのだが、書名が思い出せない。
何とか帯に書かれていた情報を思い出し、
自衛隊員 復讐
というキーワードで検索してきたところ、
この小説にヒットしすぐにKindleで購入した。

初めて読む作者だったので、ちょっと不安だったが、とても読みやすく、あっという間に読んでしまった。

一言でいうと妊娠中の妻と義母を殺された最強の自衛隊員が復讐をする物語。

戦闘シーンでは銃の専門用語がこれでもかというくらい投げかけられる。
圧倒的な量の専門知識の波状攻撃は、素人の余計な思考を停止させる。
何を言ってるのかよくわからないので、逆にストーリーに集中できるのだ。

アマゾンリンクの先にネタバレを全く気にせず、思ったことを書く。
これから読んでみようと思う方はご注意を。


この話は、主人公が復讐をする物語。
妻を殺した少年たちに対する復讐はもちろんだが、
その少年たちをほぼ無罪という形で許してしまった裁判所や国、
そして、それらを守ろうとする警察に対しての復讐劇だ。

単なる復讐だったらよくある話なのだが、自衛官が国に対して復讐をするという設定は、かなり面白いと感じた。

主人公は、国防に命をかけていた。
彼が守っていたのは日本であり、日本の政府ではない。

主人公の妻を殺害した少年たちが、とにかく最低の人間として描かれているので、復讐自体はある意味、とても爽快。
しかし復讐の仕方についてはめちゃくちゃ残酷。
痛そうだし、気持ち悪そうな描写をこれでもかというほど重ねくるので、思わず顔をしかめてしまう。

主人公は感情を捨て、全てに対して冷静に取り組むという訓練を自衛隊で積んできたので、用意周到に準備したものが、面白いくらいに順調に進んでいく。

一見冷静であるように見えるが、この復讐の仕方、殺し方を見る限りでは、既に主人公は妻子を殺された時点で狂っていた。
冷静な判断ができる狂人。
これほど恐ろしいものはない。

驚いたのはエンディング。
この手の話では、どんなに強い主人公でも
最終的には警察に捕まったり殺されたりしてしまうもの。
これもそうなのだろうなと思っていたら、主人公は最後まで生き延びた。
もう、主人公無双。
無双ゲームの爽快感を存分に味わえる。

最後に。主人公を陰ながら支援してきた上司から
「死なないで生き延びろ」的な指令を受ける。

まるで反逆のルルーシュでスザクがルルーシュから
「生きろ」
というギアスをかけられたように、主人公はこれからも、ずっと戦い続けるのだろう。

続編でもできそうな終わり方ですが、今のところ続編は出ていない。
個人的には続編は不要。
この話は妻を殺した犯罪者を裁かなかった「国」に対する復讐の物語
という主題があるから面白いのに、続編になると、単なるアクション小説になってしまう。

興味深かったのは、主人公をサポートする元部下の元自衛隊員。
国内で北朝鮮軍と戦ったときに主人公から命を救われた女性自衛官は、
自衛隊を辞めて、復讐する主人公の手伝いする。
命を助けられたというだけで、自衛隊を辞めてまで主人公とともに殺人を犯すというのは、ちょっと無理があるなと思っていた。
もしや主人公に対して恋愛感情があるのかな、
それだったら陳腐だな、それでも殺人はしないだろうと思っていた。
最終的には、元女性自衛官が、人を殺すことによって快感を覚える殺人狂であるということで落ち着いた。
主人公のそばにいると、これからも殺人をすることができるので、引き続きサポートを続けるという。
この作品の中で1番危ないのは、
主人公ではなく間違いなくこいつ。

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