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「事例動画、迷惑なんです!」

自社の製品やソリューションの値打ちを導入いただいたお客様に語っていただく事例動画は、お客様の姿を魅力的に描き出してこそ説得力が増します。

そのためには、撮影時間や取材内容などでお客様にご協力いただく必要がありますが、一方でなかなか無理はお願いしにくい。よく分かります。

お客様の負担を気にして「できるだけ短時間で撮影を終えるように」と指示されることもあります。

でも、「ご迷惑をお掛けするからこそ、もう一歩踏み込んで、取材させてもらうお客様にとっても値打ちのあるものにする」という発想もあるのではないか。

それを教えてくれたのは、ある外資系IT企業のマーケティングのご担当者です。


事例動画を変える、1つの論理

その方はお客様に事例取材をお願いする際に、「当社の事例サイトで御社をアピールしてください」という表現で協力を求めているといいます。

当社の導入事例動画は、同時にお客様自身をプロモーションする動画でもある、という説得論理です。

そうすることで、しばしばお客様の事例動画に対するスタンスは変わるといいます。

確かに、ご理解を得て「スタンスが変わった」お客様は、撮影取材をそれほど迷惑に感じておられないような気がします。

むしろ「ここも撮影しませんか?」と逆に提案をいただいたりすることも。


逆説的な方法の効果

とはいえ動画撮影は、ある程度の迷惑をおかけするのは事実です。

だから私たち映像制作会社も、ご迷惑度合いを最少化しながら、お客様にとってもプロモーション効果の高い動画にしようと思案します。

そのために効果的なのが、実は事前打合せです。

「ご迷惑を最少化しようとしているのに事前に打合せ?」と動画を発注くださるクライアントからお叱りを受けることもあります。が、「1時間でいいのです。結果的にご迷惑度を減らし、お客様のプロモーションに繋がる動画になりますから」とお願いしています。

一度実施すると、以降多くのクライアントが事前打合せをご依頼くださるようになりますので、その効果は実感いただいているのだと思います。

打合せは、撮影の数日前に、可能ならお客様先の広報担当にもご同席いただきながら実施するようお願いしています。
お客様先が遠隔地にあるなどの理由で訪問することが難しい場合は、Web会議等でもいいので予めコミュニケーションを取らせていただく。

そうすることでお客様にとっても効率的な撮影スケジュール(撮影香盤)も組め、事前にご依頼事項も整理できます。
「できること、できないこと」が気持ちよく合意でき、可能な範囲でのご協力を引き出せる。このプロセスも大切です。
仮に新しい発見がなかったとしても、当日の撮影は確実にスムーズになります。


行間を彩る

そして、これ以上に私が事前打合せを重要視するさらなる理由があります。

それは説得力を持つ構成のため。インタビューコメントの“行間”を豊かにする材料を探し出すためです。

たとえば、インタビュー撮影をする場所探し。
事前打合せができない場合は、広めで静かな会議室をお願いすることが多いのですが、それは「先ずは場所を確保する」という安全を見越してのこと。
ですが、背景が白壁の会議室よりそのお客様ならではの場所の方が映像から受ける印象も違いますし、コメントも生き生きと迫ってきます。

“行間”を豊かにするもうひとつの重要な材料は、インタビュー以外の撮影項目、いわゆるBロールです。
Bロールは「イメージカット」と呼ぶこともありますし、コメントに挿入する意味で「インサートカット」と称することもあります。

それまで担当者間では議論に上がってこなかった項目も、事前打合せを行うことで新たに見つけることができることがあるのですが、
こうして発見したお客様を描く要素、ちょっとしたシーンやエピソードがこのBロールに結実したりします。


映像の撮影は確実にご迷惑をお掛けします。それを引き受けてくださったからこそ、お客様にとっても値打ちのある事例動画にしたい。

実現できれば、お客様とのエンゲージメントは確実に高まります。

そのために、クライアントも私たち制作会社も、もう一歩踏み込めたらと思うのです。

(記事:ホンマヨシカズ /producer)


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