マガジンのカバー画像

詩と詩と思しきものの観察及び観測

25
詩と詩と思しきものを観察または観測したものです。
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

予知[詩]

予知[詩]

 風が入ってきて
 教室の空気が揺れた
 夏
 目をあけて眠る金魚の
 無意識に前のほうの席の半袖

 風が入ってきて
 外の木立が揺れた
 午後
 目をあけて眠る金魚は
 ふと水が黄金色にひかった気がした

長いうた[詩]

長いうた[詩]



プルトップの狂態に
水槽の奥の
シーラカンスがプカリとわらった
昨日とその前からの惰性が皮膚の下に蓄積している
脱皮?
アマゾンからきたという凶暴な魚が
身を持てあまして困っていた
金曜の夜
丸い皿を上からのぞく
「今日あなたがわたしを食べたって 明日はあなたも食べられるんです」
と死んだ浅蜊が底で言った
殻を持たないのであっさり食われるだろうとおもう
イルミネーションがカメの甲羅で小さくおど

もっとみる
自由地[詩]

自由地[詩]

 雨晒しの豊饒に触れる
 明る過ぎて眼を瞬く自分がいた
 やがて低気圧が北上してこの街にくる
 脚の欠けた椅子がひとつ
 錆も砂にうずまってしまうまで
 誰かの訪うその日まで