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『友人の本棚~1分で読める感想文~』vol.17「天国はまだ遠く」

「もしも人生にリセットボタンがあるなら、死んでみたいと思う?」
誰しも一度や二度は「自分が死ぬときのこと」を考えたことがあると思う。そんなとき、リセットボタンがあったらいいのにね、みたいにいうけれど、でもやっぱり死ぬのは怖いし、暗くなるから考えるのやめとこうよ、というお決まりのパターンに入りかけたときに、友人がこの本を紹介してくれた。

「自殺」をしようと一人旅に出た主人公が、人里離れた民宿で自殺に失敗し、そこの店主と共に過ごす二十一日間の中での心境変化を描いた物語。純粋に「生きる勇気」を、何の嫌味もなく、読み手を選ばず、もれなく全員がもらえる気がした。

自分でも不思議だけど、一時間前、どうがんばってもだるかった身体が、今は弾んでいる。二十日前、死のうとしていた私は、今、子どもの頃のことを思い出して絵なんて描こうとしている。何十年かけても変わらないこともあるけど、きっかけさえあれば、気持ちも身体もいとも簡単に変化する。それにもっと敏感に対応していかないといけない。そう思った。

きっかけさえあれば。ほんとうにそう、全てはきっかけさえあれば、と思う。何かを始めるのも、誰かを好きになるのも、もう一度がんばろうと思うのも。自分の人生に大きな影響をもたらす何かも、何年、何十年と関わることになる誰かも、全ては「きっかけ」から始まるのだ。

僕らがこの世に生まれることになったのも、きっと何か一つのきっかけだったのだろうし、この本を僕に紹介してくれた友人も、一つのきっかけだった。そもそも僕がnoteに感想文を書こうと思ったのも一つのきっかけだし、それこそ、あれもこれもそれも、僕もあなたもあの人の今日も、何かのきっかけから全てが始まっている。

もしも、ほんの些細なことで、何かが決まってしまうとしたら、それはもう些細とは呼ばずに「全て」と言えるのではないだろうか。たかがきっかけ、されどきっかけ。だから今日からぼくは「全て」の始まりとなる「きっかけ」を、これまで以上に大切にしていきたいと、この本をきっかけに、そんなことを思った。

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