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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.58「ここは私たちのいない場所」

音楽も、小説も、人によって、あるいは心境によって、時に深く大きく心に響くことがある。前々からその感覚がすごく不思議で、なぜ同じものを見たり聞いたりしているのに、こうも感じ方が違うのだろうかと思っていた。そんなときに、手にした本。

大手食品メーカー役員の芹澤は、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚せずにいた。そんなある日、元部下の鴨原珠美と関係を持ってしまうが、それは珠美の罠だった。しかし、芹澤自身は珠美との関係を続けていく中で、少しずつ心境の変化が生まれてくる。心のスキマにそっと入り込む、優しい物語。

もしも、私たちが「死」を知らなかったらどうなるだろう?
祖父母も両親も兄姉も、そして奥野のような親友も、ある日、どこかへ行ってしまう。ただ、それは決して死んでしまったわけではなくて文字通り「いなくなった」だけなのだ。彼らはどこかでそれまでと同じように暮らしている。そして、私たちはもはや彼らと会ったり話したりすることができない。そこはもう諦めるしかない。

「死」に対する捉え方が今までにない表現で、思わず鳥肌が立った。これに倣うと、「死」とは「疎遠」だ。連絡が取れなくなる、いなくなる。ただそれだけだと思えば、もしかしたら「そんなものかも」と思える気もしてくる。逆に今、疎遠になっている人は、僕の中で「死」と同じ、、、と書いてて少し怖くなったので、この解釈を飲み込むまではもう少し時間がかかりそうだ。

普段は意識なんてしないのに、なくなったと思うと急に寂しくなる。なんて勝手な生き物なんだろう。そう考えると、一期一会の精神で人に接するということがとっても大切なんだなと、これまで100回くらい思っては忘れを繰り返してきたことを思い出した。

なので、「一期一会」という概念が僕の中で死なないように、101回目の決意をここに記しておく。


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