見出し画像

『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.29「ホテルジューシー」

「なんで旅先だと気が大きくなっちゃうんだろう?」
少し前に「私とは何か」という本を読んだときに、「分人主義」という考え方をマスターした。その流れでいえば、きっと旅先の自分は、普段の自分とは別の分人になり、その分人はある意味「旅行中限定の刹那的な分人」であるから、きっと余生に思い残すことがないように、思いっきりはじけるのではないか。そんな仮説を友人に話してみたら、この本を紹介された。

大家族の長女である主人公が、那覇のゲストハウス・ホテルジューシーにバイトに行く。そこで出会う色んな人との色んな出来事の中で、成長をとげていく物語。1年前くらいに沖縄旅行に行ったのだけれど、「バイトで旅行先に行く」という選択肢をもう少し若い時期に知っていたら、もっといろいろなところに行けたなーと、あまり意味のない後悔をした。

「強くって、どうやったらいいかわからない」
震える声で、アヤがつぶやく。オーナー代表は彼女の頭を軽く撫でながら続けた。
「簡単だよ。順番を逆にすればいい」
「え?」
「結婚や子供っていう目的優先で探すんじゃなくて、大好きになった人と結婚すればいい。そうすれば、子供は愛の産物になるから全部ハッピー。違うかな?」
-越境者 より-

旅の目的の一つに、「現実逃避」というものがあると思う。何かを忘れたくて、目の前の何かから逃げたくて、ここではないどこかへ旅に出る。そこで出会ったきっかけを一番のお土産に、心を少し整えて、また現実へと戻っていく。

今はほぼ外出が出来ないので、なかなか旅行に行くというのは難しいけれど、早くコロナが収束して、また(というほど出かけていないけれど)色々なところに行きたいな。別に逃げたい何かがあるわけではないけれど、そこで作られる刹那的な分人を楽しみつつ、加えてそこで働く人たちにも興味を向けてみようと、この本を読んで改めて思った。

この記事が参加している募集

よろしければサポートをお願い致します! いただいた金額は活動費にさせていただきます!