見出し画像

100日後にデビューするYouTuberを見つけたので盗撮してみた #33

ササノは自分の意思を隠しながら生きてきた。そのせいでたくさん嫌な思いをしてきたのだろう。そしてそれを、ある日出会ったホームレスのせいにしている。

「だから、ホームレスを見ると嫌気が差すんです。あのときのこと思い出して。ときどきホームレスが殺されたニュースとか出るじゃないですか? 正直全然可哀想とか思わないです。もしかしたらその中には『東京大学』と同じようなことしてた奴がいるかもしれないし、それによってあのときの僕と同じように悔しい思いをした少年がいるかもしれない。『進撃の巨人』読んでますか?」

唐突な質問に戸惑いながら、私は『進撃の巨人』についての記憶を探した。

「アニメの一期は観ました。そこで止まってますね」

「あれ、巨人をでかいホームレスとして観るとめっちゃ感情込もっちゃうんですよね。『駆逐してやる…』て。僕、エレンにほぼ憑依できますもん」

「でかいホームレスですか?」

私は少し笑ってしまった。あの漫画をそんな風に読んでいる人がいるのか、と。
ササノも笑ってはいたが、ホームレスに対する根の深さは充分に感じた。じゃないと巨人とホームレスをダブらせるなんていう発想は出てこない。
そしてその一方で、これだ、と直感してもいた。ササノには悪いが、このコンプレックスを使わない手は無い。

その後、次の企画会議はいつやるのかと話を詰め、レンタル会議室の予約まで完了させてようやく解散となった。

帰り道、私は丸山に連絡をとった。
彼は彼で今日、たつやと会っているはずだった。
LINEして約30分後、丸山からの返信があった。

『たつやを攻めるとしたらお兄ちゃんっすね!3つ上の兄貴がいるらしいんすけど、そいつバリ最悪です!』

収穫はあったようだ。さすがやな、という意味を込め、私はスタミナ丼のスタンプで返事した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?