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プロジェクトをドライブする「遊び」のチカラ

「煮詰まったプロジェクトでは、”遊びの時間”が自分たちが想定していないところまで連れて行ってくれる起爆剤になる。」

僕は2015年から2年間、アメリカのMITという大学のデザインスクールに留学していました。

1年目の後期には、企業との提携プロジェクトがあり、僕はスペインの「CAMPER」という靴メーカーのプロジェクトに参加しました。

キックオフミーティングでは、スペイン本社から専務が直々にプロジェクトを説明しに来てくれ他のですが、その時に会社の抱える3つの課題を提示されます。

①ターゲット:若者に対するブランド力が弱い
②サスティナビリティ:革製品は環境負荷が高い
③テクノロジー:生産体制が古い

これらの課題の全て、もしくは一部を解決して欲しいというのがオーダーでした。許された時間は2ヶ月で、その期間でコンセプトをまとめ、プロトタイプを作ることが求められました。

最初の3週間はコンセプトワークで、僕たちのチームが出した方向性は

「サスティナビリティのラインを立ち上げることで、若者に対するブランド力を強化する」

という方向性。
靴を作る過程で生まれ、捨てられる廃材を使って新たな製品を生み出すというものでした。

で...困ったのはここから。
全く良いアイデアが出てこない。
ブレストしても出てくるのは、廃材で作ったコースターとか、壁に飾れるインテリアとか、椅子とか...
どれもこれもピンとこないのですが、締め切りはどんどん迫ってくる...
そんな中で、チームメンバーの1人がこんなことを言いました。

もう考えるの飽きた。
とりあえず、素材で遊んでみようよ。

遊ぶ?
正直、そんな時間は無かったのですが、煮詰まったこの状況を何とか打破したいと思い、彼女の提案に乗ることにしました。
買ってきた色とりどりの革の端材を前に、とりあえず切り刻んで、とりあえず透明のアクリル素材で固めて、革の板を作ってみたり。
もうプロジェクトのことは一旦忘れて、夢中で板を作ること2日(笑)

そこで生まれた革の板は、僕たちの想像をはるかに超える、とても美しいものでした。これがターニングポイントになり、試行錯誤を続ける中、切り刻んだ革をラバー素材で固めることで、靴のソールを作るというアイデアに至りました。最終的には、そのプロトタイプ、新たなサスティナビリティブランドのストーリーやロゴなどのパッケージを最終アウトプットとしました。

最終プレゼンではスペインからなんとCEOが来るというサプライズ!
コンセプトだけでなく、プロトタイプを絶賛され、彼からは社内で実現に向けて検討してみたいという言葉をいただきました。

この結果は当初チームメンバーの誰も想像していなくて、「遊び」の時間がなければ、あの停滞した、煮詰まった状況からは抜け出せなかっただろうなと思います。
まさに、遊びがプロジェクトをドライブした瞬間でした。

最近、仕事の中に「遊び」の時間を持てていないなと感じています。
自分たちが想像を超えるアウトプットを生み出すために、どうやって「遊び」を組み込むかを考えようとワクワクする今日この頃です。

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