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東急百貨店跡地で魅せる、変わりゆく儚さと残り続けるもの ― 乃木坂46『熱狂の捌け口』


2023年1月31日をもって閉店した、東急百貨店 渋谷・東急本店。そこには、55年の歴史があった。

わたしは東京で暮らしたことがなく、行ったことはないのだけれど、閉店のニュースはテレビで見た。ラジオでその思い出を話しているエピソードトークも聴いた。行ったこともないのに、なんだかその寂しさが分かるような気がしたことを覚えている。たくさんの人の思い出のなかにある百貨店だったのだと思う。

閉店後、建物は解体され、跡地には地上36階、地下4階の複合施設の建設が予定されているらしい。

55年の歴史。だれかの思い出。変わりゆく時代。

いろんなものが詰め込まれているその跡地、いましかないその場所で、いましかない輝きを放つアイドルのMVが撮影されている。


乃木坂46『熱狂の捌け口』



乃木坂46の36thシングル『チートデイ』に収録される楽曲、『熱狂の捌け口

乃木坂46の5期生メンバーが歌う楽曲で、センターは一ノ瀬美空さん。かわいらしいルックスとは裏腹に、メンバーへの愛がとてつもなく重く、たまに見せる嫉妬に狂った笑顔と言葉には狂気を感じる。いつか女優になって、サイコパスな女性を演じてほしい。そんな彼女が赤い衣装を身に纏ってセンターで魅せる『熱狂の捌け口』楽曲、衣装、振付、最高!感謝!


さてさて、ここでは撮影場所について書きたいのでした。

このMVは、渋谷の東急百貨店跡地で撮影されている。

5期生かわいいなあ、と思いつつも、なかなかの廃墟だなあ、エレベーターがあったり、大きな階段があったり、トイレらしきものがあったり、なんの廃墟なのだろう、と背景が気になりまくる。

そして曲が終わり、カメラが街全体を映しはじめる。ものすごく都会だ、見たことがある気がする、と思ったら、そこはもう渋谷だった。


儚い輝き、心に残る美しさ


素晴らしい、と思った。

アイドル、というか乃木坂46というグループにおいて、乃木坂5期生という集団において、この跡地でMVが撮影されたことが素晴らしい、と思った。

渋谷の東急百貨店跡地は、いましかない場所だ。きっとすぐに新しく綺麗で大きな複合施設に姿を変えるのだろう。変わりゆく街。いましかない、跡地。

女性アイドルは儚い。いつまでもそこで輝いていてほしいけれど、そうもいかないのだ。多くの人はアイドルとしての人生を近い将来終えてしまう。だからこそ、いまこの瞬間の輝きを見逃すことなく、目に焼き付けようとするしか、ない。

けれど、その輝きは残るのだ。美しく舞う姿、カメラを越えてくるほどのまっすぐな瞳。その美しさはだれかの心に残る。ファンの心にも、未来のメンバーの心にも。いまはもういない1期生、2期生のあの笑顔を覚えているように。あの美しさに憧れた女の子たちが、いまの乃木坂を支えているように。

女性アイドルは儚いけれど、きっとその美しさは残って、続いてゆく。

東急百貨店本店。きっとそこにも、ずっとだれかのなかに残るものがあるのだと思う。

あのときあのブランドで買った服、初めて買ったデパコス、あの本屋で買った本、レストランで過ごした時間、屋上から見た景色。新しい施設ができて、そこでもいろんな思い出ができるのだろうけれど、きっとだれかの心に残るものは、続いてゆくものは、あるのだと思う。

いましかない跡地で、いましかない輝きを放つ乃木坂5期生の姿。できる限り長く、11人で輝き続けていてほしいし、その美しさを覚えていたい。


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