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どこにいたって君のことが好きだ ―乃木坂46 35thSGアンダーライブ


アンダー

この言葉を聞いて、あまり乃木坂46に興味がない人はどういう存在だと思うのだろうか。

もう長らくオタクをしているわたしとしては、慣れ親しんで、あたりまえのように使ってしまっている。

乃木坂46というアイドルグループにおけるアンダーとは、シングル曲の選抜メンバーに入っていないメンバーのことである。選抜メンバーは多くても20人弱。大所帯のアイドルグループにおいて、全員選抜の制度をとらない限りは絶対的に発生してしまうポジション。選抜メンバーに選ばれていないメンバー、それがアンダーメンバー。上下の意味での下を意味する言葉を使うなんて、異常だ。

シングルの宣伝期間にテレビや雑誌に出るのは、ほぼ全て選抜メンバーだ。つまり選抜ではないアンダーメンバーは、極端にメディア露出の機会が少なくなる。これはアイドルも、ファンも悲しいことだ。

そんなアンダーメンバーのみで開催されるライブが、「アンダーライブ」である。

今回の35thシングルアンダーライブは、先週金曜日から日曜日にかけて3日間、有明アリーナで開催された。(1万人を超えるキャパシティの会場が3日間埋まるほど人気のあるメンバーたちなのです!そして、その会場を埋め尽くすファンの方々の熱量が熱い!それがアンダーライブなのです!

現地参戦は叶わなかったものの、最終日は配信してもらえたおかげで今回のアンダーライブにテレビ前の最前列で参戦することができましたので、感想を記します。

(ネタバレを全面的に含みますので、金曜日のリピート配信をお楽しみにされている方は、配信後にあらためて読みに来てくれると嬉しいです!)

アンダー楽曲で溢れだす思い出


アンダーライブでは、アンダー楽曲と呼ばれるアンダーメンバーのみで歌唱されているシングルのカップリング曲が主に歌われる。そのため、セットリストにシングル曲はとても少ない。乃木坂のライブなのに、「シンクロニシティ」も「インフルエンサー」も歌わないのだ。それなのに、満足度は120点という驚異のライブ。(もちろん100点満点で!)

今回のライブ3日目では「Actuary…」「夜明けまで強がらなくてもいい」「太陽ノック」の3曲のみがシングル曲で、あとはすべてアンダー曲などのカップリング曲での構成だった。

カップリング曲ばかりのライブ。それでも大満足な理由として、楽曲のそもそもの良さと、オリジナルメンバーが作ってきた物語が垣間見えるからだと感じた。

オリジナルメンバー(過去のアンダー楽曲での発売当時のアンダーメンバー)での歌唱というのは、その当時のライブ以外ではもうみれないものだ。最近の楽曲だとしても、メンバー全員のライブではないアンダーライブにおいて、オリジナルメンバーが揃うことは無い。

1,2期生は全員卒業しているし、今回のアンダーメンバーに3期生がいないことから、過去の楽曲は4,5期生のみで再構成して披露されている。

でも、たしかに感じたのだ。オリジナルメンバーの、あのときしか見ることのできなかった熱いパフォーマンスを。アンダーになった推しを応援していた自分の、あの頃のなんともいえない熱い気持ちを。

それはきっと、現メンバーのパフォーマンス力の高さはもちろん、彼女たちが見てきた先輩たちの背中に対する想いがそうさせているのだと思う。いま真っ只中でアンダーとして活動している彼女たちが、あの頃のアンダーの思い出を魅せてくれた。


アンダーへの憤りを忘れさせてくれる、希望に満ちたアンダーメンバーたち


オタクとして思い出に浸ってしまいましたので、現在に視点を戻します。

現アンダーメンバーは15名。先ほども書いたとおり、今回は4期生と5期生のみで構成されている。

というか、アンダーメンバーなんて呼びたくないのだ。全員、それぞれとっても魅力に溢れた素敵なアイドルだから。

歌唱力の確かなメンバーもいる。スタイルがモデル級のメンバーもいる。ダンススキルも高い。そして、とても意識が高く、頑張りすぎるくらい頑張っている、プロのアイドルだ。

今回のセットリストでは、最初の10曲がノンストップで披露された。フルサイズの曲もあり、ダンストラックもある。メンバーは入れ替わるのではなく、全員でのフォーメーションダンスを踊り続ける。そして、それぞれのメンバーが、魅力たっぷりのファンサービスも欠かさない。

そろそろ休憩してくれ!黙って待っとくから一回舞台裏でお茶飲んできて!と叫びたくなるほど、彼女たちは歌って踊って、ファンを笑顔にし続ける

わたしはふと冷静に考えた。彼女たちはひとりも選抜メンバーではないのだ。乃木坂46としてグループがテレビに出るとき、彼女たちがいることはほぼないのだ。そんなのありえなくないか???どんなシステムなんだ???と怒りがふつふつと沸いてきた。

そうしてわたしがふつふつしているのなんてお構いなく、彼女たちは踊り続ける。MCの時間、ゆっくりおしゃべりしてくれたらそれでいいし、ファンはちゃんと聞いているからねと思うのに、体力測定します!とか言ってサインボールを投げたり、三輪車を漕いでレースをしたりと、動き続ける。どんだけエンターテイナー集団なんだ。そしてまた始まるダンス曲のブロック。嘘だろ…

彼女たちの魅力で笑顔になったり感動したりしているうちに、行き場のないふつふつとした怒りなんてものはなくなっていた。乃木坂には彼女たちがいるのだ。ここにいるのは、選抜になれなかった選抜の下のアンダーメンバーなんかではない。アンダーメンバーと呼ばれているだけのトップアイドル。こんな集団がいるなんて、すごすぎないか乃木坂46。

彼女たちが笑顔でアイドル活動を続ける限り、乃木坂46の未来には希望しかない。


アンダーセンター・筒井あやめ というアイドル


アンダーライブには座長という存在がいる。そのシングルのアンダー曲でセンターを努めるメンバーが座長となって、そのライブを引っ張っていくのだ。

今回の座長は4期生の筒井あやめさん。およそ6年前の加入当時、13歳の最年少メンバーだった。とにかくかわいい。4期生が加入してはじめてシングル曲に参加したとき、彼女は選抜メンバーとなった。センターは同期の遠藤さくらさん。同じく同期の賀喜遥香さんと3人で、一列目であるフロントメンバーを努めた。

その後も彼女は選抜メンバーとして活動していた。選抜常連組だと誰もが感じていたと思う。

その彼女が、今回の選抜発表で名前を呼ばれなかった。

3期生の山下美月さん卒業シングルではありながら、4期生でも選抜に入っているメンバーはいた。どうして選ばれていないのか。本人はどう思っているのか。ファンはとても戸惑って、心配していたと思う。ファンを気遣ってか、選抜発表放送後の彼女のブログには「前向きにしか捉えてないです!そこはご安心を」と記されていた。

そして座長として迎えたアンダーライブ。わたしの知らなかった彼女が、そこにいた。

センターポジションに立ち、まっすぐ前を見つめていた。「わたしにとっての大切な歌」そう言って歌った、はじめて選抜に選ばれたシングル曲、「夜明けまで強がらなくてもいい」での力強い歌声。

今回のシングルで彼女がアンダーになったことは、きっと意味があったのだと、このアンダーライブが、彼女にとっても彼女を応援するファンの方たちにとっても、きっといつまでも鮮明に思い出せる、かけがえのない時間なのだろうと思う瞬間だった。

「乃木坂に革命を起こしたい。」
そう言ってこらえていた涙を流す彼女の姿をみて、彼女こそがまた新たな乃木坂46なのだと強く思った。

最年少。選抜常連。顔がかわいい。おしとやかそう。そんな風に思っていた筒井あやめというアイドルは、もうそこにいなかった。これからはきっと、彼女がまっすぐに乃木坂の車道側を歩いていくのだろう。


どこにいたって君のことが好きだ


ライブ本編のラストに披露された今回のアンダー楽曲「車道側」。

歌詞の最後の一行にはこの言葉がある。

どこにいたって 君のことが好きだ

乃木坂46 / 車道側

大所帯の女性アイドルグループのオタクをしてきたわたしにとって、これ以上の心境を言い当てたフレーズはないと思う。

選抜とかアンダーとか、センターとかいちばん後ろとか、そんなことは極論どうだっていいのだ。ドームライブもアンダーライブも応援する気持ちは変わらない。

推しが幸せそうに笑うなら、つらいときでもわたしたちファンがいることを知っていてくれるなら、どこにいたって見つけられるし、応援し続ける。そうあらためて確信できるアンダーライブだった。

どこにいたって君のことが好きだ!


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