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SNS疲れに気付いたときに読んでほしい、おすすめエッセイ本 3選

SNSには情報が溢れている。欲しい情報も、欲しくない情報も。

わたしは会ったこともない人ばかりをフォローしているアカウントを持っていて、そのタイムラインをぼーっと眺めるのが好きだ。顔も名前も知らない誰か。なんなら性別も分からない。でも、その人の暮らすこだわりの空間や作る手料理、心が疲れたときに紡ぎだされる弱音のようなか細い言葉を知っている。感性が好きなだけの、その人たちの見せてくれる暮らしをのぞき見するのが好きでSNSを開く。

だったはずなのに、最近のSNSにはいらない情報が溢れている。お願いしていないのにおすすめしてくる豆知識やどっちでもいい論争、知りたくもないノイズのようなゴシップ。

SNS媒体はユーザーに使ってもらってなんぼ。それで収益を上げているのだし、そういった構造になってしまっているのは仕方ないことだよなとは思う。

悲しいのは、そういった情報だと分かって画面をスクロールし続けている自分自身だ。目の疲れと心のざわめきに気付いたときには、もう何十分も時間を溶かしていたことに気付く。

そんな時間の使い方をやめるため、SNSにうんざりしたらエッセイ本を開くようにしている。物語ではなく、作家さんの日々の暮らしを綴ったエッセイ。

そこでは、作家さんの暮らしをのぞき見することができる。ときには頭のなかでどうしようもなく考えていることなんかも見せてくれる。人の暮らしや考えをぼーっと眺めたいなら、SNSよりエッセイ本がいいときもある。

SNS疲れに気付いたときにおすすめしたい、エッセイ本をご紹介します。


「卵を買いに」 小川糸 著


取材で訪れたラトビアに、恋してしまいました。手作りの黒パンや採れたての苺が並ぶ素朴だけれど洗練された食卓、代々受け継がれる色鮮やかなミトン、森と湖に囲まれて暮らす人々の底抜けに明るい笑顔。キラキラ輝くラトビアという小さな国が教えてくれた、生きるために本当に大切なもの。新たな出会いと気づきの日々を綴った人気日記エッセイ。

幻冬舎HPより

「ツバキ文具店」、「ライオンのおやつ」など、だれかと関わりながら生きることの尊さを優しく教えてくれる小川糸先生。

小川先生のエッセイ本は日記の形式で、一年間の暮らしが綴られている。この作品は、生活の拠点が定まっていなかったり、さまざまな土地に旅に出たりと、なかなか忙しない一年間だ。でも、そこに適当に日々を過ごしている様子はない。

季節の移ろいをしっかりと感じながら、そのときにその場所で食べられるものを大切に食べ、考え続けている。違和感を持ったことは受け流さず、しっかりと自分の言葉にして整理しているのが小川先生のエッセイの魅力だと思う。

こだわりの空間で毎日ゆとりを持ったスローライフを送ることとして使われがちな「丁寧な暮らし」という言葉。時間の過ごし方としては丁寧ではあるが、何も考えないでただゆとりを持って生きているのは違うのかもしれない。

いま居る場所で自分の暮らしをつくっているものに意識を向けて、しっかりと考えながら生きていきたい。小川先生のような「丁寧な暮らし」をしていきたいと思う。


「のっけから失礼します」 三浦しをん 著


ありふれた日常……の、はず、なのに!?
三浦しをんワールドが炸裂する抱腹絶倒超大作エッセイ集!
愛する漫画や宝塚、EXILE一族への熱き想い、家族との心温まったり温まらなかったりする交流、旅先でのあれこれ、タクシーで個性的な運転手さんと繰り広げられる会話、ふとしたきっかけから広がる壮大な空想……。なにげない日常のはずなのに、なぜだかおかしい。雑誌「BAILA」での連載5年分+αのエピソードがこれでもかと詰め込まれた、三浦しをんワールド全開の爆笑エッセイ集。

集英社HPより

笑いたいときは、とにかくこちらのエッセイを!

本を読んで笑うという経験をしたことはあるだろうか。テレビや動画、笑わせてくれるコンテンツはたくさんあるけれど、本の縦書きの文章だけで爆笑させてくれるなんて、ものすごいことだと思う。

わたしは、さくらももこ先生と三浦しをん先生のエッセイでは爆笑してしまう。特にこちらの「のっけから失礼します」は、本当に笑える。

「まほろ駅前多田便利軒」や「舟を編む」など、名作を生み出す作家先生でありながら、その日常は一般人のわたしと変わらないのでは?わたし以上に家から出てないのでは?と親近感でグッと近くに来てくれる文才。だからって、刺激がない平凡な一日なんて、三浦先生にはない

家のなかで起こるささいな出来事や、街で誰しも経験のあるささいな出来事。本当にささいな出来事でも、着目して考えていくだけで、こんなにもおもしろくなるのか!と爆笑する。

文章のリズムも心地よく、ぽんぽん読み進めてげらげら笑っていると、しかめっ面をしてSNSで見ていたいらない情報なんてどうでもよくなってくる。いや、あのしょうもないゴシップも、揚げ足をとって批判するのではなく、こうやってクソ真面目に原因と対策を考えていけば、そのしょうもなさに気付いて笑いにすることができるのかも?とまで思えてくる。

頭をポジティブにぐるぐる動かしたいときにおすすめのエッセイだ。


「お茶の時間」 益田ミリ 著


ふらっと立ち寄ったカフェの店内で、周囲の人間模様を目にしつつ、自分自身もあれこれと思索にふけった経験はないでしょうか。まったりするからこそ、ふと人生について深く考えることもある。そんな瞬間が見事に切り取られていて、思わず「そうだよね」と頷いてしまいます。喫茶店あるあるやクスッと笑える描き下ろし漫画も満載! 益田ミリが描く、じんわり染みて面白さが後を引く傑作寄り道系コミックエッセイ!

講談社HPより

SNSに疲れ切った頭をとにかく休ませたいときはこちら。益田ミリ先生が「お茶の時間」をテーマに描く、超読みやすいコミックエッセイ

おうちでのお茶の時間、カフェでひとり過ごす時間、編集者や友人との何気ないカフェでの会話、旅先でお茶を飲んで一息つく時間、デパ地下でお惣菜を買ってエスカレーター横で休憩する夜などさまざまなシチュエーションでの「お茶の時間」が描かれている。

にぎやかなカフェでだれかと過ごしたり、ひとりで周りの会話を聞いて考え込んだり。なんとなく過ごしている時間が益田先生の思考とともに切り取られており、一緒にお茶の時間を過ごしているような気持ちになれる。

ほっと一息つきたいお茶の時間をすこしだけ特別な時間に思えるコミックエッセイ。すくない言葉数でありながら益田先生の見る世界をわたしにも垣間見せてくれる、益田先生のエッセイが大好きだ。


スクロールに疲れたら、本を開いてみる


SNSは新しいものに溢れてキラキラしていて、どうしても眺め続けてしまう。その先にはたくさんの情報が流れているから身を任せていると楽しいけれど、一気に流れ込んでくるものを処理できずにうんざりしてしまうことがある。

そんなときはもうスマホを置いて、本を開いてみる。なんとなくスクロールして他人の情報を眺めるのとおなじように、なんとなくページをめくって、そこにある暮らしや考え方を眺めるのである。

そこには、誹謗も中傷も、下世話なゴシップもない。安心して眺められる文章ばかりだ。それは、何気ない暮らしをすくい上げて言葉にできる作家さんの文章であり、さまざまな人が関わってこそ作り上げられた本という作品だからだと思う。

SNSに疲れたときに、すっと手に取って楽しめるエッセイ本。

是非、自分の好きなエッセイ本を探しに書店に行ってみてください。

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