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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2019年3月の記事一覧

雨が降っている

雨が降っている
ぱらぱらぱら
不規則な調子で
ぱらぱ、ら、ぱら

雨が降れば会いに来る
と言ったあの人は
いつからか来なくなって
来ない為の言い訳も消えていった

雨が降っている

涙ではなく
寂しさでもなく

ただ
冷たい雨が降っている

追いかけている

彼女の泣き顔を
忘れられないまま
夜がおりて

拒絶された指先
投げつけあった言葉
並べただけの言い訳

でも、を繰り返して
君の寂しさを
追いかけている

いまさら
追いかけている

どこへ

音をなくした夜道を
歩く あるく
寂しさに負けそうで
赤い点滅信号の
存在意義をみつけようとした

昨日も今日も知っていて
明日も想像出来るのに
どこにもいけない気がするのは、なぜ

大事なものはわかっている
たぶん、たぶん

それでも
消えそうな感情は
どこへ行くのだろう

どこへ

信じていた

楽しいことだけを選んで
いつまででもはしゃいでいた

白い空白
潜めた声
秘密の空地
溶けたアイスキャンディは見ないふり

優しい夕焼けの切なさに
手を繋いで
約束した明日

このままでいられると
信じて疑いもしなかった

信じて、いた

流れていく

寝静まった夜の音が響く
眠れない時間を
一人きり 持て余して

会いたいなんて感情も
もう、忘れそうで
たった今聞いた声も
もう、忘れそうで

今日が流れていく
静かに

私は私のままで

何度目かの春

途切れ途切れの言葉で
物語を紡ぎ
短い言葉だけで
君に恋を語った

いつか消えてなくなると
他人事のように
言い聞かせ
言い聞かせ
また君の手を握る

大事なことは
何も言わずに
もう、何度目かの春

春を重ねて

いくつかの春を重ねて
いくつもの春を重ねて
あなたに恋をしました

降り積もる切なさ
淡いままの期待
こぼれた涙は
秘密の欠片

あなたに
あなたに
恋をしました

また、明日

今日も夜がきて
おやすみなさいと
どこからか
声が聞こえます

眠りたくない言い訳を用意して
遠いいつかの初恋を思い出せば
ほら、もう
明日はすぐそこ

おやすみなさい
おやすみなさい

また、明日

強がり

君が残していたチーズケーキを
全部 食べたし
行きたいね、と約束したことも
全部
もう、全部 忘れた

泣きそうになるのは
君のせいじゃなくて
きっと花粉症

君は君で
僕は僕で
そんなの当たり前で
二人にはなれなくて

終わった恋を
春の風に溶かす