ファミリー #12

 晩ご飯の準備はみんなでした。僕らは料理も自分たちでする。僕がお米を研いで、炊飯器に入れた。モクが、スーパーで見つけてきた野菜で、サラダを作り始める。そして、レインとサマーと、イナモが魚を使ってアクアパッツァの準備を手分けしてやっている。
 ご飯を作っていて、おいしい匂いがしてくると、五人全員が入れるキッチンがこの家にあってよかったと思う。僕は、モクのサラダの盛り付けを手伝ったり、サマーに言われて火加減を調整したりした。
 レインは冷蔵庫からフルーツを取り出して、デザートの準備までしている。アクアパッツァが煮詰まったら、火から鍋を下ろして丸い机の中央に置いた。みんなで、サラダ、フルーツ、ご飯をよそって、それぞれの椅子に着く。
 サマーの椅子は丸い太陽の光のような背もたれで、サマーが座ると周りがぱっと明るくなるような気がする。
 モクの椅子は、黒い背もたれがない椅子で、とてもシンプルだ。モクの体の大きさからすると物足りない気がするが、逆に、モクがこれからどれだけ大きくなっても、気にならない椅子でもある。モクは、僕がきたときよりも二回りぐらい大きくなっている。
 イナモの椅子は、仕事ができるように、くるくると回転する軸と、キャスター、そして腰がふわりと浮くようなきれいな貝殻のような曲線を描くデザインだ。とても使いやすそうだけれども、イナモではない人が座るのは少しためらわれるような、気品がある。
 レインの椅子は、木がきれいに組み合わされた背もたれに、座るところは組木細工になっていて、水面がキラキラしている様子を感じられる。
 僕の椅子はつるっとした木の葉のイメージで、足がキラキラと光る鉄のパイプの組み合わせだ。木の葉のように軽くて、ほかのみんなが気軽に引き出して、座っているところをよく見る。
 でも、ご飯を食べるときはこうしてみんな自分の椅子に座って食べる。アクアパッツァの鯛は、魚や、タマネギ、パプリカ、トマトに彩られて、黄色いオリーブオイルの染みたスープに横たわっている。
 目は、真っ白でもう何も見ていない。モクがゆっくりと箸で、鯛の身を切り取った。そして、それぞれ順番に少しずつ鯛の身を切り取って食べた。
 ご飯が終わると、食器を片付けて対話の準備をする。みんなおなかいっぱいになった幸せを感じながら、生ゴミをコンポストに入れ、お皿を洗浄機にセットする。

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