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"嘘"が飛び交う本多劇場『リムジン』


登場人物全員に"違和感"

あらすじ
田舎で小さな町工場を営む康人(向井理)は、町の実力者・衣川(田口トモロヲ)から後継者に選ばれる。ところが、その喜びもつかの間、康人は誤って衣川に怪我を負わせた上にごまかしてしまう。そうして濡れ衣を着せられたのは康人の友人・坂(小松和重)。
「全部正直に話そう」と、妻・彩花(水川あさみ)に説得されて、ようやく覚悟を決めた康人だが、いざ衣川を前にすると、夫婦ともども再び迷い出し…。
小さなコミュニティーの中で起こるささいな事件。そのさざ波のような波紋が静かに拡がっていき、康人は、これまでの選択すべてに疑念を抱き始める。

本作公式パンフレット「あらすじ」(俳優名のみ追記)



登場人物各々の口から、色々な嘘と本音が出てくる。

つい、ついてしまう小さな嘘。から広がる嘘。

狭いコミュニティ内での、小さな人間模様。


「嘘」をテーマとした舞台は多数あるが、私は2017年に上映された三谷幸喜さん脚本・演出の『不信〜彼女が嘘をつく理由〜』を思い出す。この作品もシリアルさとコミカル要素がふんだんに盛り込まれていて、スリリングかつ"丁寧"な作品ですごく好きだった。


掴めない登場人物たち


この登場人物は、こういう人!となかなか言えないのも、内の顔と外の顔の両面を、同じ舞台上で見ているからかもしれない。

登場人物たちの微妙な感情の動きが手に取るようにわかり、自己保身のために変わりゆく性格には、目を逸らしたくなる。

言いたいのに言えない康人と、何でも言っちゃう白水の対比構造は興味深く。白水に対して異常な怒りを見せる康人にも、何か見ていられないような気持ちになる。

シェイクスピア劇『マクベス』から見る『リムジン』


『マクベス』の内容は、マクベス(夫)が後に王の継承者になるだろうと仄めかされた夫人が、その欲にかられ、王を殺してしまう。この事件から、夫人はマクベスと自分自身に「嘘」を強要し続け、結果的には夫婦共々疑心暗鬼に駆られ、精神的に狂っていくというもの。

『リムジン』の「嘘」「罪」もこれに通ずるものがある。

「夫婦」という絶対的な関係性は、時に驚異的な「何か」を創り出す。だからこそ、罪の共有、秘密の共有が生まれる。

観ているこちらにも、罪の共有が余儀なくされる。

それが、この作品に対して「何か分からないけどバツが悪い感じ」を漂わせる理由なのだろう。


舞台上では何も起こらなくても感情の動きを伝えるという技術。倉持裕さんの丁寧な脚本だからこそできることなんだと思う。

舞台転換もない会話劇だけれど、テンポもめちゃくちゃよく。

「サスペンス」という割には、コミカルなシーンもあり、ふふっと笑ってしまう。


水川あさみさん、個人的に好きなのですが、話し方も動き方も演技も安定感があって見事でした……。
最近はドラマ「人は見た目が100パーセント」を観たばかりだったので、尚更テンションも上がりました。

そして青木さやかさんの元気な姿を観れてとっても嬉しかった。



今回も、『もうがまんできない』のときに虜になってしまったポニピリカさんで、観劇前にスープカレーをいただきました。恒例のおひとりさま席で。静かに「これこれ!この味!」と興奮していました。


余談ですが、向井理さんの早着替えに、マダムたちの喜びの声を空気で感じました。声を出さずとも。

空気が興奮していた。

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