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暁の寺-豊饒の海-を読んで

知っているどころか、私の双生児の妹ですわ。
もう亡くなりましたけれど

これは、本多が今作の転生者ジン・ジャンが亡くなっていることを知った場面。

暁の寺のあらすじ

自分は日本人の生れ変りです。
タイの姫君は本多繁邦にそう訴え、松枝清顕と飯沼勲に関する質問にも性格に答えた。続くベナレスの旅で本多は輪廻の実相を目撃し、白い聖牛の厳かな顔に慄然とする。
脳裏に甦るのは清顕の「あの言葉」。
戦後、姫と再会した本多はその肌に転生の印を見究めんとするのだが…。

この「暁の寺」が前二作と異なるのは、ストーリーの主人公が「転生者」ではなく本多であり本多の目線でほぼ進むことだ。
故に知識量が追い付かない。
本多の探求心には脱帽だ。

また、この「暁の寺」は二部構成になっているのも特徴だ。
第一部の舞台はバンコク。そしてインド。
ジン・ジャンと合う時の美しさとガンジスの生々しさ。
二つのイメージがそれぞれをより引き立たせる。私はそう感じた。
本多はジン・ジャンと会うのだが、彼女は「日本人の生まれ変わりであり、本多のことも覚えている。」という。そして、本多の質問にも性格に答える。ここで本多もジン・ジャンは転生者なのかと思うが、三つの黒子はない。

舞台は移り第二部は日本。
本多は裕福になっていた。
別荘を建てる。
元々の家柄も貧困ではないが、やはり厳格なイメージの本多からすると、ちょっと以外ではあった。
本多は日本に留学中の18歳になったジン・ジャンを招く。
そこでジン・ジャンの脇の下に黒子があることを知る。
その後いろんなことがあるわけだが、
ジン・ジャンの姉と会い、20歳の春に亡くなったことを知る。コブラに噛まれて。

と大部分を省略して書いたわけだが、私の感想としては「難しいがその考えはなかった」である。
一番は「唯識論」について。
分からないことが多すぎて読み終わった後に、理解できなかったことを調べながら読み返した。それでもちゃんと理解できたかは怪しい。
ただ、とても興味深かった。
この唯識論は次作の「天人五衰」にも繋がる。
読むときは事前に調べることをお勧めしたい。

この作品を読むと本多のイメージが変わる。
本多も仮面を被った人間だったのだと感じさせてくれる。
見えているもの。見えていないもの。
人間の醜さ美しさとも感じることができるこの「暁の寺」。
是非オススメしたい。

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