「君たちはどう生きるか」を観た・読んだ

 前回帰省した際、母と一緒に映画館で「君たちはどう生きるか」を観た。

 ジブリ作品は幼い頃から親しんできたので大好きだ。・・・と言いつつ、好んでいるのは千と千尋までの作品で、ポニョ以降は観ていない。千と千尋の時はまだ小学ウン年生だったが、成長していくにつれて新しい作品を追うことがなくなってしまってた。実家には録画機がなかったのでフライデーに放送されるロードショーもスルー(CMが厭でリアルタイムで見ない)。今の家ではさすがに録画ができて、昨年放送された「思い出のマーニー」があるので今度見よう見ようと思いつつ結局見れていない。こんなんだけどジブリ美術館は2回行ったことあるよ。一番好きな作品は紅の豚です!

 そんな私が見た「君たちはどう生きるか」は正直ウーン難解だった。封切りされてから2ヶ月。ネタバレ感想もたくさん流れていたががんばって一切見ず!・・・米津玄師が主題歌でキムタクが出演していることは知ってしまったが、それだけの情報で臨んだものの、いやちょっとはあらすじやらを頭に入れといた方がよかったかしらんと、上映中にめちゃくちゃ思ったくらい全然わからんかった。
 感想を述べようとしても思い出せない・・・。そもそも見てからすでに二ヶ月経ってるし・・・。
 鳥がとにかくたくさんでてきた。家が豪邸でいいなあと思った。新しいお母さんが綺麗だった。私の隣に座っていた女性が、主人公が大量のカエルに襲われた時に小さく「ヒィ~」、机の下で寝ていた主人公が起きた時に机にすごい勢いで頭をぶつけるシーンで超でかい声で「ワ!!!!」と叫んだのでびっくりした。

 鑑賞後、母に「あの大叔父は絶対宮崎駿の投影だよね!!!」と恐らく何万回もレビューで書かれていることであろう推測を意気揚々に伝えると、「いや違う。アインシュタインだよ。あれは相対性理論だ」と言われた。(母は文系寄りの美大卒)

 ますますわけがわからない。
 こんなんじゃいかんと思って、またまたがんばってネタバレ感想考察サイトは調べず!!南の島に戻ってきてから図書館で吉野源三郎著「君たちはどう生きるか」(岩波文庫)を借りて読んだ。

 素晴らしい作品である。なんかだもう身がすくむ思いというか、いったい私は三十余年もどう生きてきたんだという恥ずかしい気持ちが湧き上がるといいいますか・・・。
 読みながら、もっと子どもの時に読んでいればよかったと何度思ったことか。2017年に漫画化されてヒットされたことは知っていたが、その時よりもっと前に読みたかった。いや2017年でもまだ間に合ったかも。とにかく、もっと早く読んでいれば私はもう少しマシな人間になれていたのでは・・・と、なんだか感想も浅はかで恥ずかしい限りだが、とにかくそう思った。子どもが生まれたら絶対読ませたい。
 生きていくうえで、正しいことだけが書いてある本だと思った。教科書みたい。

 刊行から86年。この名著を読んでようが読んでまいが、この本に書いてあるような「正しさ」(それもこの正しさというのははっと目が覚めるようなものではなく、至極当然当たり前の正しさなのだ…)を少しでも心に留めて生きられている人は、いったいどれくらいいるのだろうか・・・と、昨今の日本にあかるい期待が持てない私はそう考えてしまう。

 「僕は、すべての人がおたがいによい友だちであるような、そういう世の中が来なければいけないと思います。人類は今まで進歩してきたのですから、きっと今にそういう世の中に行きつくだろうと思います。」

「君たちはどう生きるか」 /  吉野源三郎 / 岩波文庫

 ラストに書かれたこの一文に切なさを感じてしまった。
 86年経ってありとあらゆるものはとてつもなく進歩して便利な世の中になったが、残念ながらコペル君が理想としていた世の中にはまだ行きついてない。

 ・・・コペル君はいったいどんな大人になったのだろう。
 ・・・コペル君がコペルニクスからきているって、読んだ時すぐに気づけやしない無知な私・・・。
 いやそもそも映画見たときもコペル君という名前にさして違和感すら抱かなかったなと思って調べたら、主人公の名前コペル君じゃなくてマヒト君だったーーーい!

 たぶん宮崎駿監督は、今一度日本人にこの名著を改めて読ませるべく、この難解な映画を作ったのだろうと思った。それならば、観てよかった。

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