千葉ロッテマリーンズの中村奨吾が首脳陣の期待に「一発回答」した。
6月1日、対東京ヤクルトスワローズ戦で、中村奨吾はプロ8年目、出場901試合目にして初の「4番」打者に起用された。
ロッテが0-1と1点ビハインドで迎えた2回、中村が先頭打者として右打席に入ると、ヤクルト先発の右腕・原樹理の投じた初球を捕えた。打球はロッテファンが居並ぶレフトスタンドへ。
中村奨吾の今季3号ソロホームランで、ロッテは同点に追いついた。
その直後、安田尚憲の今季1号となる勝ち越しアーチ、4回にも2打席連続となる2号ソロ本塁打、同点で迎えた6回にはブランドン・レアードの勝ち越しタイムリー安打で、ロッテがヤクルトをかわし、4-3と逃げ切った。
中村奨吾は奈良・天理高校で3度の甲子園出場を経て、早稲田大学野球部に進んだ。
同級生にはエース有原航平(元日本ハム→MLB移籍)、1学年下には茂木栄五郎(楽天)、重信慎之介(巨人)を擁し、正二塁手の中村奨吾は4年生の時に主将を務め、リーグ優勝こそ果たせなかったが、自身2度目のベストナインも受賞した。
そして、中村と有原の二人は共に2014年のドラフト会議で、それぞれロッテ、日本ハムから1位指名を受け、プロの世界に飛び込んだ。
中村にとって、大学時代を過ごした神宮球場ははいわば、思い出深い「庭」である。
東京六大学野球リーグでは通算11本塁打を放っていた。
その11本目は、最後の秋の早慶戦で、慶應の投手・加藤拓也(現・矢崎拓也、広島)から放った一発である。
そのゲンのよさが早速、打球に乗り移った。
今季、ロッテは主砲格が軒並み不振で苦しみ、得点力不足に悩む中、中村は首脳陣の「4番起用」に一発で回答して見せた。
そして、これが中村奨吾にとって、プロ入り全打順で本塁打を記録するという、メモリアルな一打となった。
NPBで「全打順本塁打」を記録した選手は、中村奨吾まで22人を数える。
「全打順本塁打」というのはつかみどころのない記録である。
達成した選手の特徴を考えてみると、一概には言い表せない。
「必然」と「偶然」が重なり合わないと達成が難しい記録だ。
さらに、パ・リーグはDH制を導入しており、野手も打順9番に入るが、セ・リーグは交流戦の時だけしかDH制が無いため、全打順本塁打の達成の難易度が高いといえる。
「全打順本塁打」という記録は、その打者が出世魚のように変異や進化しながら成長を遂げたことを示す証なのかもしれない。