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“「褒める」ことで伸ばす”の罠

「褒めることで、子どもの自己肯定感を高め、向上心を育みたい」

これは私が長く掲げていることであり、
子どもへの教育の在り方として大切にされていることの一つでもあります。


しかし、
宮口幸治さんの「ケーキの切れない非行少年たち」を読了し、その考えは少し違うのかもしれない
ということに気づかされました。


その本では、こう言っていたのです。


「自己肯定感が低いのは悪いことなのか?」

自己肯定感を高めることが、善であると思っていた私にとって、これは衝撃的な言葉でした。

子どもが
「自分はどうせ何もできない…」
「どうせ何をやっても無駄だ…」

と思ってしまうことは問題であるし、自分の可能性を閉ざしてしまうことに繋がります。

だからと言って、
大して褒められるようなことでもないのに
えらく褒めるのって、どうなんでしょう。


「何もできないのにえらく自信を持っているのは問題じゃない?」


確かにと思いました。

周りから変な目で見られ、人間関係がうまく構築できない可能性が出てきますし、
将来社会に出て、自分の非力さに気付き、挫折してしまう

そんな未来が見えてしまいます。


褒めるだけじゃ根本的な問題は解決しない

ということを心に置いておくべきです。

じゃあどうすればいいの?

子ども自体の能力を高めていくことが最も必要でしょうが、困難な場合もあります。


私の体験に基づいて、一つ例を挙げます。

“A君は文字を書いたり読んだりすることがとても苦手。苦手である故に、ノートを書く気もないし、読もうともしない。教科書の音読の順番が回ってくれば、いつも止まって、「練習しないからだよ」と先生に怒られてしまう。”

学級に少なからず、1人はいるタイプの子だと思います。

私は、サブティーチャーとしてその子に対し、

指で字をなぞりながら示したり、
教科書の漢字に振り仮名をつけたり、
私が読んだ後に読むようにさせたりと至って普通な視覚的・聴覚的支援を行いました。


それだけでその子は、
教科書をしっかり持ち、しっかりと最後まで文を読むことが出来るのです。
(読み方は他の子と比べれば少しぎこちないが)

支援があったからといって、

これは褒めてあげるべきことでしょう。

その子はもしかすると、LD(学習障害)の疑いがあるかもしれません。


LDの子の支援としては「苦手なことを無理やりやらせる」というより、「得意なことを生かしていく、伸ばしていく」といったことが有効であるとされています。

特別支援学校の免許を所得するため、
様々な講義を受け、あらゆる障害を抱えた子どもたちと接してきました。

確かに読み書きが苦手な子が、その困難を克服するのはとても難しいことであると実感しています。


そのようなケースでは、
苦手なことに対しての能力を高めることが困難であるかもしれません。

しかし、困難に目を背けてばかりではその子の能力は閉ざされてしまうので、
基本的にできる限りの支援は必要です。

能力を高めるトレーニングとして、「ケーキの切れない非行少年たち」の第7章でいくつか紹介されていたので、是非読んでいただけたらと思います。


また、褒めることは決して悪いことではありません。

根本的な問題は解決しないかも知れませんが、
教師が子どもを認め伝えることは必要不可欠な行為です。


自己肯定感は、

無理に上げる必要もなく、低くてもいい。

ただ、ありのままの現実を受け入れていく強さが必要である

私たちは、将来社会の担い手となる子どもたちを支える大人として、

ありのままのあなたの良さ

を子どもに伝えていくべきなのではないでしょうか。



散々これまで述べてきましたが、

私はそれでも「自己肯定感」を高める声掛けには努めていこうと思います。


「自分ならできる!」
「色々なことに挑戦したい!」
と思える気持ちは、失敗経験や成功経験に繋げ、

人間としての成長に結びつき、子どもの可能性を広げていくものであると

私は、そう信じているからです。

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