オトコとオンナ | MEN & WOMEN
ちょっと前から疑問に思っていること。
まだ答えには辿り着いていないけれども、その疑問について書きます。
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一日の生活の中で一度は見る・言う・聞く、「男性/男」「女性/女」という言葉。
私の場合は、普段カナダで大学生活を送っている中で、日本語の「男性」や「女性」にあたる言葉として、英語の"Men"や"Women"を使っている。そしてジェンダー学を勉強していることもあり、それらは頻出ワードの一つだ。
男性とMen、女性とWomenはイコールで結ばれる言葉で、それぞれ同一の事象を指す言葉として認識してきた。
それは、中学英語で習ったこと。
そしてそれ以前から、女性用トイレをWomen'sとか、男性向けのファションをメンズファッションとか、日常的に聞いて・見て・言ってきたから、"常識"として刷り込まれていることだ。
しかしふとしたことをきっかけに、男性とMan、女性とWomanが本当にイコールで結び得る言葉・概念なのか、という疑問が出てきたのである。
まず、「ジェンダー」についておさらい
ジェンダーとは、端的に言えば社会的な性差。性別に関連するふるまいや規範、役割など。それは社会的・文化的に構築されるため、その社会、時代によってパターンは大きく異なる。
同時に、ジェンダーシステムが異なれば、男女という性が普遍的なわけではないとも言える。
きっかけは、ジェンダー学の授業。
北米の大学でジェンダー学を学ぶとなると(特に私の大学ではジェンダー学は歴史学の領域なので)、絶対に授業で扱うのが植民地支配のこと。
それは、カナダという国が、もともと先住民族の「Turtle Island」という土地であり、植民地支配でその土地を略奪して建国された国だから。そこでは虐殺、迫害、飢餓、疫病などによる先住民族の著しい人口減少があっただけでなく、先住民族を文化的にも劣等で野蛮な存在としてみなし、文化的・言語的・宗教的に"根絶やし"にする同化政策が徹底的に展開されていた。例えば、レジデンシャルスクールなど。そしてその影響は今も社会の構造や制度など至る所に根深く残っている。
植民地支配によって壊されたものの一つが、カナダ先住民独自のジェンダーのあり方。もともと先住民は氏族によってさまざまなジェンダー観をもっており、それは男女という枠組みを超えていた。氏族によっては38のジェンダーがあったり、(分かりやすい言葉を使うとしたら)トランスジェンダーやノンバイナリーの人々は宗教的に重要な役割を持つ存在だったり。
もちろん、先住民のジェンダーを表す言葉は、もともとトランスジェンダーやノンバリナリーなどの英語ではなく、氏族独自の言語だった。しかし、植民地支配の同化政策により、そのような言葉も葬られてしまった。そして、キリスト教に基づいた西洋的な男女二元論、異性愛規範、シスジェンダー規範こそが"文明的で正しい"ジェンダーシステムとして、入植者政府によって強制的にそして暴力的に浸透されていった。
カナダでのジェンダー学研究において植民地支配がとても重要であることについて 、ちょっと長く話したけれども、ここで注目したいのは、先住民のジェンダーシステムと入植者のジェンダーシステムが大きく異なっているということ。ジェンダーを表す言語もまったく違っていた。
言い換えれば、ジェンダーに関する言葉(例えば、日本語の「男」「女」など)はその文化・社会におけるジェンダーシステムを土台にしているということだと思う。
これを日本のコンテキストに置き換えてみる。
あたりまえのように、男性の英訳はMen/Man、女性はWomen/Womanと言っているが、「男性/男」と「女性/女」は実は日本の社会的・文化的ジェンダーシステムを深く紐付いていると思う。その一方で、"Men/Man"や"Women/Woman"は欧米英語圏(⇦範囲が広すぎ笑。Men、Womenが日本にやってきたときの歴史を遡ればどこの地域かわかりそうだけど)のジェンダーシステムの文化的・社会的プロダクトのはずだ。
語学的な側面だけに着目すれば、男性/男とMen/Man、女性/女とWomen/Womanはイコールで結ばれるだろう。
でもそれは単なる言語の翻訳でしかなく、文化の翻訳ではない。
それぞれの言葉が帯びる文化的・社会的なジェンダーの意味に着目したとき、この2つの言葉は異なる事象を指す言葉と言えるのではないだろうか。
もっと突っ込んで考えれば、Men、Womenという翻訳が日本に入ってくる以前の日本において、「男性」「女性」はそれぞれどのような性を指す言葉だったのだろうか。それはMen、Womenとどのように異なっていたのだろうか。
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