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春がきた

週末、9/5-6 の二日間に渡って、「エッセイ講座 ~日々の想いを作品で残す」を受講しました。講師は、小説家でライターの寒竹泉美さん

自分の心に向き合うのは怖くもあったけれど、充実してとても楽しい講座でした。寒竹さんがところどころで例文を朗読して下さる美しい声が印象に残っています。

トータル10時間。いくつもエッセイを書いて、たくさんフィードバックをいただきました。その中からの一つです。

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ここ一週間ほどで日の入りが遅くなり、気温の高い日が続いている。南半球に位置するこの小さな島国は、雨続きの長い冬がそろそろ終わるらしい。気づかないうちに腰まで届きそうに伸びた髪を、少し軽くしたい。日を追うごとに力を増す太陽の下、また日焼け止めを欠かせない日々の始まりだ。外に出るたびにクリームを塗るのはめんどうに思える。

暖かくなって元気を取り戻すのは虫たちも同じであるらしく、網戸のない隙間から、名前の分からない小さな虫やハエが入ってくる。ディスプレイを横切ったり、耳元で飛び回る小さな侵入者にうんざりする気持ちを否定できない。

とは言うものの、日本にいた時と違い、花粉に悩まされない春は快適だ。

窓を開けて、淀んだ空気を追い払おう。空っぽのままだった鉢に野菜の苗を植えて、新しい日々を始めるのだ。心身ともに軽くなって、半分眠っていた意識がクリアになり、明日を楽しみにする気持ちがよみがえる。

強い風が吹いても寒くない。ランニング用のシューズを履いていない時にも走り出したい衝動が湧き上がる。料理をしながら知らず知らず、鼻歌がこぼれる。あちらこちらに咲いた花が甘い香りをまき散らし、若葉の緑は輝いている。

一年で最も美しい、新緑の春がきた。

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