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投資家心理を俯瞰して見よう

近年、在宅ワークが増加し、その傍らでトレーダー(個人投資家)も増えているらしい。実際にネット証券の新規口座開設数は右肩上がりだ。俺の周りでも投資家デヴューしている人がここ数年で増えている。

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画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000354.000011088.html

このように近年では、世の中が移り変わり、投資環境や相場状況の良さも相まって株式市場は暴騰し、今では金融相場の後半局面に突入している。

金融相場とは、中央銀行が経済を活性化させるためにお金を刷って市場に流す相場だ。中央銀行が金融緩和を行っている間は、下がりにくく上がりやすい相場であると、ざっくり覚えておいて良いだろう。

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株式市場に巨額マネーが流入する事で、遅れて実体経済も回復していくのが通常の流れだ。お金のある場所に雇用が生まれ、雇用が増える事で景気が回復するためだ。資本主義社会とはそういう風に出来ている。

なので金融相場自体は、景気回復に向かって行われる一時的な上昇局面だと覚えておく必要もある。

上の画像の通り、金融相場では株価は無邪気に上昇を繰り返す。2020年4月から相場に参加している多くの個人投資家は利益を手にしているはずだ。大体の人が株を買うだけで儲かっているので、そろそろ多く投資家が調子に乗ってきた頃だろうと思う。

最近では投資系YouTuberも増加傾向にあり、彼らは「テクニカル分析的に考えて●●を狙うべきだ!」などと相場解説の域に留まらず、投資助言まで行っている。当然、彼らは投資助言するためのライセンスは持っていない

そのような買い煽り売り煽りを真に受けた個人投資家達は、その場限りの利益や損失を出して一喜一憂し、相場の短期的な変動だけでなく、インフルエンサーの発言にも翻弄されている。

何故、彼らがそんなものに翻弄されてしまうかというと欲が強いからだ



大衆心理について

近年ではFIREというワードもSNSや雑誌などで頻繁に見られるようになったと思う。FIREとは、Financial Independence, Retire Earlyの略称で、経済的自由ないしは早期退職を目標とするライフスタイルを啓蒙するムーブメントの事だ。

日本証券業協会(JSDA)の調べによると、多くの個人投資家の資産は700万円未満である事が分かる。

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画像引用元:https://www.jsda.or.jp/about/houdou/2020/20201021_ishikicyousa.pdf

つまり、個人投資家の多くがFIREするには程遠く、様々な切り口でリッチになろうとしている。

そんな彼らの心理を大雑把に表現すると、早く安定したい早く仕事を辞めたい早く答えを知りたい早くお金持ちになりたい、早くゴールしたいといったものだろう。

そんな欲望を抱いた人達の多くが、速攻でお金を増やそうと焦った行動を取る傾向にある。彼らは欲に流され、市場を出し抜こうと、リスクの高い新興市場ミーム株を狙いがちだ。

投資においてリスクとは変動率を指す。変動率が大きいという事は保有した資産が(例えば)短期的に50%値上がりする事もあれば、逆に半分以下に目減りする事も有り得る。

しかし、多くの個人投資家は、なまじ社会人経験も染みついているためか「頑張らなくちゃ!」「稼がなくちゃ!」と無駄に売買を繰り返しジタバタする。頑張れば頑張るほどお金が増やせると思い込んでいる節がある。

そんな彼らは、理想と現実のギャップに苛立ちを覚える。どうすればもっと稼げるようになるのか、どうすれば早くFIRE出来るのか、という思いに執着し、リスクの取り方が雑になる

やがて彼らは自分が悲惨な目に遭う事を考えなくなる。人は自分に不幸が起きるとは考えたがらず、その可能性を低く見積もるからだ。

その後、余計な行動・感情・欲・慢心が大きな失敗を呼び、じわじわと傷口を広げ、メンタルは恐怖一色に染まり、やがてパニックを起こす。せっかく保有していた資産を安値で売却して、今まで稼いだお金を市場に吐き出してしまう。

たった一度の失敗で、資金的にも精神的にも立ち直れなくなり、二度と投資なんかしないと固い決意と共に市場から去っていく。

逆に、出来る投資家は視野が広く、長期的に俯瞰している。歴史的にマクロ経済は下落局面より上昇局面の方が期間が長いこと、複利の力が働くこと、欲を出さずジタバタしない方が資産が増えやすい事を理解している。

なので彼らは変動率(リスク)を減らすように、堅実に資産配分し、時間を味方につける長期戦略を取っている

つまり、欲深く、余計な事をして大怪我しがちな大衆トレーダーの心理を熟知した上で、どっしり構えた出来る投資家の心理も熟知するべきである。

出来る投資家は、欲を出すことなく「今ある優位性に張る」傾向が強い。



テクニカル分析について

大衆心理ド真ん中の個人投資家トレーダーは、リスクの高い市場・銘柄を選び、主にSNSで飛び交っているネット情報ゴチャゴチャしたテクニカル分析を用いて、一攫千金を狙う傾向にある。

テクニカル分析に関しては、多くの人が「株価チャートの読み方さえ覚えれば自分だって稼げるようになる!きっと億り人になれる!」といった風に、いつの間にか万能予測スキル、ポテンシャルを秘めた秘密兵器のように過信している。確かにテクニカル分析だけで億トレーダーになった人もいるから、そのように考えてしまうのだろう。使いこなせば役に立つことの方が多いので間違ってはいない。

だが、俺の見解は少し違う。

テクニカル分析はあくまで「環境認識」をするための道具だ。

未来を予測するスキルでもなく、市場をねじ伏せるための武器でもない。

例えば、あなたが見知らぬ土地を自動車で移動していると、地図(ナビ)をひらくだろう。次にやる事は「現在位置は?周囲は?目的地との距離は?どうなってる?」と現状を多角的に確認するはずだ。

テクニカル分析の真髄はそこにある。

現状を確認する事で、このまま道を進むべきか?やめておくべきか?一旦引き返すべきか?近場のパーキングで休憩するべきか?といった選択に移ることが出来る。

前回の記事「暴落の神?」でも触れたが、相場全体が暴落している局面では、VIX指数(恐怖指数)は暴騰する。暴騰している間は、実はテクニカル分析が全く通用しない事の方が多い。激しい嵐の中、最新の地図(ナビ)に従ったところで安全な道を選択できるとは限らない

しかし、テクニカル分析を妄信し、目先の欲に嵌った個人投資家は、それが分からなくなる。間違った判断はしていなはずだ決めつけてしまう。

また、自分が狙いを定めた市場や銘柄を見て「安い!欲しい!」「これだけの利益が欲しいからここまで株価は上がれば上出来だ」と主観による思い込みだけで飛びつき買いをして、含み損になった状態から、必死になってまた違う手法のテクニカル分析を追加するように駆使する人も多く存在する。そうなると何をすれば正解なのか分からなくなり混乱する。テクニカル分析を妄信しすぎた事で全く意味不明な分析に嵌ってしまい、パニックに陥る。

だからこそテクニカル分析を扱う場合は、主観的な意識・願望をできるだけ排除し、客観的に把握するためのモノだと弁えておくべきだ。


大衆心理の逆張りをしよう

個人投資家の多くが楽観相場で欲を出し、市場を出し抜こうとして失敗に終えている。その現実を踏まえてどういった戦略を取るのが適切か?

二通りの答えを用意した。

1つは過去記事「インデックス投資をしよう」にあるとおり、全世界インデックスS&P500インデックスのような投資対象に資金を投じて気絶するだけだ。

もう1つは、個人投資家の本質《大衆心理》への逆張りだ。

まず、有効となる指標の一つは、過去記事「本当にヤバイ暴落は不動産バブル崩壊」でも紹介した「Fear&Greed Index(恐怖と強欲の指数)」だ。これは70~100の間は市場参加者のセンチメントが高まっている事を指し、投資家全体が楽観状態だといえる。逆に0~30に振り切っている場合は悲観状態だ。

もう1つは、信用倍率だ。

信用倍率とは毎週決まった曜日に更新される指標の一つで、市場参加者のうち個人投資家のみが信用取引(証券会社から借金した状態での取引)を使った買いポジションと売りポジションの割合を表わしたものだ

たとえば、個人投資家が、某自動車株を300万株ほど信用買いしたとする。それと同時に別の個人投資家達が某自動車株を150万株ほど信用売り(空売り)したとする。

信用倍率は信用買い残÷信用売り残で計算するので、この場合の倍率は「2」となる。

つまり、ショートよりもロングの方が2倍も多いという事だ。

一見すると、売り圧力よりも買い圧力の方が2倍も強いのでは?という見方も出来るが、相場はどこで転換するか分からないという事を忘れてはならない。将来、連鎖的に買いポジの決済が起こった時、逆回転が起こる。

逆回転が起こった時の売り圧力の方が2倍強くなる

すると、見るに堪えない大きな値崩れが発生し、その下落の初動は大抵が突発的かつ早いので、殆どの個人投資家は対応することが難しいだろう。

損失を受けた個人投資家(買い方)は、持ち株がズルズル下がっていくのを指を咥えて眺めるしかない。この時の個人投資家は「反発してくれ」と祈っている状態だ。

中には思い込みの強い個人投資家(買い方)が「流石にこれ以上は下がるわけがない!」と根拠の無い主張をして、意地になってさらに信用買いを追加して、悪循環の連鎖に陥る事も珍しくない。

こうなると、将来の売り圧力がさらに増えてしまい、下降トレンドの継続がますます強化されてしまう。

すると個人投資家(買い方)の多くは、持ち株を売るに売れなくなり、漠然としていた不安が恐怖に顕在化する事で冷静な判断が出来なくなる

やがて株価が底打ちする頃には、買い方だった個人投資家の殆どが途中で株をパニック売りをして、資金の多くを溶かしてしまい、相場の世界から退場するはめになる。

このように通常の投資家心理とは、強欲に負けやすく、思い込みに陥りやすく、恐怖に染まりやすく、非常に脆いものである事が分かる。

我々はいつかやってくる暴落に備えて、常に投資家心理を俯瞰する必要がある。さもないと、暴落局面で彼らと同じ行動を取ってしまい心中するのがオチだ。

だからこそ、信用倍率(買いと売りの需給状況)といった投資家心理に関わる指標にも注意を払うべきで、自分が勝ち続けていたとしても決して見逃さず、過信するべきではない。

有名な相場格言がある。

―――強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく。

大衆が悲観している時こそが絶好の買い時であり、楽観している時こそが絶好の売り逃げ時であり、幸福感に包まれている者は暴落を食らいやすいといった意味だ。俺の相場観もこの格言に集約されている。

市場は最大多数の参加者に対して、最悪の痛みを与えてくる場所である事はあらゆる相場の歴史が証明している。

なので投資家心理を俯瞰できる者こそが相場を制すると俺は考えている。

まだ慣れていない部分もありますが、サクッと読める記事を目指します。