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ぼくがかんがえた さいていげん の おんらいんじゅぎょう せっとあっぷ(僕が考えた「最低限」のオンライン授業セットアップ)

1. はじめに&この記事の宛先

読みづらいタイトルですみません m(_ _)m

でも、内容はマジメに書きましたので、ご一読いただければ幸いです。特に、企業研修や一般向けセミナーも含む広義の教育関係者で、オンラインで授業や講義、セミナーをしないといけないんだけど、機材をどうしたらいいか悩んでいる――ただし、予算にはかなり厳しい制限があって… という方にご覧いただければと思います。

2. この記事を書いた動機

僕は、九州大学ビジネス・スクール、通称QBSというところで准教授を務めています。QBSでは、新型コロナウイルス感染拡大防止の一環として2020年度前期の授業をすべてオンラインで実施しました。

僕は、2月にQBSの母体となる九州大学経済学研究院という組織の授業オンライン化特設チーム(現在は「授業」がとれて「オンライン化特設チーム」になりました)のメンバーに任命され、Zoomの法人契約の窓口業務やオンライン授業実施のための資料作成と教員研修を担当しました。オンライン授業実施のための資料については、note記事としても下記マガジンで公開しています。ご興味お持ちいただけましたら、購入ご検討ください。

加えて個人的にも、WithコロナだけではなくAfterコロナ時代においてオンライン授業のノウハウは教員稼業には必須のものだと考え、あれこれ試行錯誤(≒散財…)しながら、自宅のワークスペースを整備してきました。その進化の過程をFacebookで公開していたところ、何人かの知人から「機材のセットアップはどうしてる?」と問い合わせを受け、先日こちらの記事をアップしました。

幸い、知人の範囲を超えて多くの方々にお読みいただけたのですが、すると今度は「こんなにいろんな機材を揃えるのはムリ!」「最低限これだけは、っていうミニマルセットを教えてよ」というお声をいただきました。まあそうですよね。

なので、僕の現状とこれまでの進化の過程をご紹介しつつ、手元に何もないところからまずはGood Enoughな状態でオンライン授業をやれるくらいまで機材を揃えるとしたら何がオススメかをまとめてみようと思った次第です。

3. 僕のオンライン授業用機材の現状とこれまでの変遷

僕自身の機材まわりは、現在上記の記事の状態からさらに進化して、

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こんな感じになっています。サブ機のPCを机の上に置いているとふだん本や飲み物を置くときにジャマなので、フレキシブルアームを机の左奥に取りつけて、必要のないときは脇に動かせるようにしました。

中央に見える(待受画面がONになっている)のがメインPCのHUAWEI Matebook X Pro 2020 Edition。アプリ等の情報処理を行うCPUが第10世代のインテルのCore i7というハイエンドなもの(※)であるのに加え、画像・動画処理専用のNVIDIA® GeForce®MX250というグラフィクスカードが搭載されているので、動画や高解像度の画像を組み込んだパワポスライドを駆使してもフリーズすることはまずありません(←オンライン講師にとっては死活問題)。授業のときは、こちらでZoomを立ち上げて配信しています。

※ CPUの性能ってどうみたらいいの?という方は下記の記事をご参照あれ。

加えて、もう一台、型落ちのHUAWEI Matebook X Proをサブ機にしてパワポはこちらで立ち上げ、さらに外付けのマイクとデジカメをATEM mini proという機械につないだうえでメインPCに接続。オンライン授業のときは、さらに別途外付けの大型ディスプレイで画面共有したパワポスライドを確認しつつ、メイン機のモニターでZoomのギャラリービューを開いて受講生の方々の表情や反応をチラ見、というスタイルでやっています(詳しくは前述の記事をご参照ください)。

これ以前のスタイルは、こんな状態でした。

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使っていたPCは一台、旧型の(現在はサブ機にしている)HUAWEI Matebook X Proのみ。もともと持っていた大型ディスプレイは今でも使っているものと同じですが、ATEM mini proはありません(そもそもPC一台しか使わないので複数の画面や音声を組み合わせるスイッチャーはほとんど使いようがなかった)。

そして、音声と画像の入力も、現在使っているRØDEの「NT-USB」スタジオマイクSONYのVlogカメラことZV-1ではなく、

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ロジクールのヘッドセットとWEBカメラを使っていました。

だからといってこれらの質が悪い、というわけでは決してありません。むしろ、職場の同僚はじめ、「これからオンライン授業をやるんだけど…」という人から相談を受けたら、まずはこのあたりがいいんじゃないですかとオススメする類のセットです。

それでも、WEBカメラのほうは3万円弱と結構いいお値段しますが、ヘッドセットはたしかビックカメラの店頭価格で3千円しなかったくらいだったはず。むしろカメラの三脚のほうが高かったくらい。

その後、ヘッドセットマイクでは相当気をつけないと鼻や口から吐いた息がマイクにかかってボボ―ッというノイズになってしまうため、前述の通り、

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RØDEというメーカーの「NT-USB」スタジオマイクを導入しました。

こちらは、
(1)正面からの声を優先的に拾ってくれる指向性マイクであり、
(2)吐息がかかることで生じるノイズを防ぐ、ポップガードと呼ばれる網状の風防が付属していて、かつ、
(3)これまた付属のUSBケーブルでPCをにつなぐとダイレクトに使える(ドライバーのインストール等も必要ない)簡便性
という好条件が揃っており、僕の購入満足度TOP3に入ります。

4. 【本題】ぼくがかんがえた さいていげん の おんらいんじゅぎょう せっとあっぷ

以上をふまえて、

「これまでずっとチョーク&トーク(Chalk & Talk)の一斉講義でやってきて、オンライン授業用の機材は何もない。あったらいいな、のNice-to-haveはいいから、最低限これだけは揃えておけというEssential Equipmentは何なんだ」

という(僕の知人のような)ニーズをお持ちの方に向けて、優先順位が高いほうから順番にオススメ機材をご紹介していきます。

① (比較的)高性能のノートPC

まずは何といっても【ノートPC】。パソコンです。これがないと始まらない。

スマホや(iPadなどの)タブレットPCは持ってるよ、という方。あるいは、ちょっと古いけどノートPCはあるにはあるよ、という方。

オンライン(または対面とオンラインを同時進行させるハイブリッド型)で授業ないしセミナーをされるのであれば、とにかくPCにはこだわって、しっかり投資するのが得策です。

PCはZoomやPowerpointなどのアプリを立ち上げるだけではなく、それらのプログラムが複雑な情報をナノ秒単位で処理し、インターネットとの接続を随時リアルタイムで調節してすべてを動かす要。ここがしっかりしていれば以下に挙げるカメラやマイクがなくても何とかなりますが、PCがショボいとどうにもなりません。どんなに高性能のカメラやマイクを揃えても、フリーズしたりネットへの接続そのものが切れちゃったりしたらそこでアウト。

より具体的には、「CPUは最低でもインテル Core i5、できれば i7 以上」「メモリは最低8GB、できれば16GB以上」「なんらかのGPUまたはグラフィクスカードと呼ばれる画像・動画処理用の機構を搭載していること」あたりが標準スペックとして必要になるかと思います。このCPU・メモリ・GPUの三要件のいずれかを満たしていないPCをお使いであれば、それらをすべて満たしているものに買い換えるためにまずは予算を割きましょう。感覚的には(2020年8月時点で)最低でも10万円、できれば20万円台の予算をここだけにかけていいくらいの重要度があると個人的には思っています。

② クリアな音声を伝えるマイク

優先度ナンバー2は【マイク】です。

よくラジオやテレビの収録風景でみるようなマイクを自宅ないしオフィスのデスクに備え付けるのはなんだか気恥ずかしい、という感じがするかもしれません。

でも、コミュニケーションにおける情報伝達の8割以上を占める非言語情報のうち、対面であれば最も大きなウェイトを占める視覚情報がギャラリービューで細切れにされるオンライン授業では、音声の品質――つまり、あなたの声が相手にクリアに伝わるかどうかが決定的に重要になります。

なので、じゅうぶん高性能なPCを購入してもなお予算が使えるようであれば、まずは外付けのマイクに投資しましょう。ポイントは、これも優先度が高い順に「指向性」「風防(ポップガード)」「USB接続」です。

まずは「指向性」。With/Afterコロナで在宅勤務がNew normalとなり、自宅のリビングや寝室からオンライン授業を行わなければならない場面もあるかと思います。僕のように引き戸でリビングの一角を区切って常設ワークスペースにできるとしても、すぐそばで家族の声やテレビの音が響いています。

PCの内蔵マイクを含む「無指向性」または「全方位型」と呼ばれるマイクは、周囲の音を区別せずにすべて拾います。その結果、すぐそばにいる家族やペットの声、生活音、テレビの音も、講義をしているあなたの声と同じく拾うことになる。なので、特定の方向から聞こえてくる音を優先的に(音量を大きく)拾う指向性のマイクを使うと効果てきめん、格段に音質がクリアになります。

その次が「ポップガード」。いわゆる風防ですね。マイクの音を拾うメッシュ状の部分をカバーして吐息や風でノイズが発生するのを防いでくれる網状の機構です。これがあると、息が漏れるのを気にせず、しっかり声を張ることができます。

最後に「USB接続」。市販されているマイクの多くはオーディオケーブルという音声を伝えることに特化したケーブルで外部機器に接続することを前提にしています(マイクは音声を伝えるものなので、これは当然といえば当然)。しかし、Zoom等のビデオ会議アプリを使ってオンライン授業/セミナーを行う場合、接続先はPCなのでこれでは具合が悪い。USB接続がデフォルトになっているマイクであれば、この点を気にせずさくっとPCに付属のケーブルを挿して使えます。

③ WEBカメラ

「ぼくがかんがえた さいていげん の おんらいんじゅぎょう せっとあっぷ」三番目の機材は【WEBカメラ】です。

PCに内蔵されているカメラを使うと、どうしてもカメラに対して使用者が見下ろす形になってしまうので、畢竟、Zoom等で映し出される画像も相手を見下ろすような、やや傲岸不遜で不機嫌な印象を与えてしまうものになりがちです。

それを予防し、意識しなくてもより良い印象を与えるための一番シンプルな対処策は「自分の目線と同じか、やや上に設置したカメラを使うこと」。自分の目線よりやや上から撮影するカメラで撮影すれば、一気にオンライン授業で受講生/視聴者の方々に与える印象を改善できます(この点については、オンライン授業のノウハウを惜しみなく共有してくださっている青山学院中等部・高等部教諭の安藤先生のGIGAチャンネルをぜひご参照ください)。

④ 外付け大型ディスプレイ」

四番目は、【外付けの大型ディスプレイ】です。

Zoom配信に使うPCに、最低24インチ、できれば32インチ以上の外付けディスプレイを接続して使うと、ふだんの作業効率が劇的に向上するだけでなく、オンライン授業/セミナー実施時に大きなメリットがあります。それは、

スライドを画面共有しつつ、
受講生の反応をチラ見できる

こと。よく「オンライン授業/セミナーでは、対面でのそれと違って受講生の反応が読み取りづらい」と言う人がいますが、外付けディスプレイをつなげて、スライドを画面共有しつつ同時に受講生の様子をギャラリービューでチラ見するように設定すると、むしろリアル対面での講義よりもよほど受講生の態度や表情が見えるようになります。「え、それってどういう設定にすればいいの?」という方はぜひ本記事冒頭でリンクを示した僕の前記事をご参照いただければと思いますが、これホントに効果的ですのでまだやっていないという方はぜひお試しいただければと思います。

⑤ その他

以上ご紹介した以外に、できる限りコストをかけずにオンライン授業のクオリティを上げるノウハウとしては、

ダミーアカウントを作ってスマホでログイン

というのをオススメします。

オンラインで授業やセミナーをやっていると、「あれ、今やっているコレって、受講生からはどう見えているんだろう」という瞬間が頻繁に発生します(よね?)。

たとえばZoomで画面共有をしたときに、ボタンをクリックしてからしばらく待って「皆さん、スライド見えてますかー?」と確認する、とか。

万一画面共有がうまくいってなくて、スライドが受講生には見えていないのに確認せずそのまま講義を進めてしまうよりも億千万倍マシですが、それでも、すでに受講生の手元の画面ではスライドが映っているのに、追って講師から「見えていますかあー?」という声が聞こえるのは、やっぱり間が抜けてしまいます。

それを防ぐのは、じつはすごく簡単。

あなたがふだんから使っているスマホにZoomやTeamsのアプリをダウンロードして、講師としてミーティングをホストするアカウントとは別のメールアドレス(なければGmailやYahoo!等のフリーメールで作成したアドレス)で登録した「ダミー」のアカウントであなたが開いたミーティングにログインするだけ。

すると、そのスマホには他の受講生の方々が見ているのと同じ画面が映し出されます。画面共有も真っ黒なローディング画面からパッとスライドが映し出された瞬間が分かるので、先述の「皆さん、見えてますかーぁ?」という間抜けな確認をしなくて済む。

ごめんなさいスマホ持ってませんガラケーですという方は別ですが、そうでなければ追加コストゼロですぐに導入できるこちらのテクニックは費用対効果という意味では無限大(なにしろ1円も支払わずに即実装できますから)。もしまだやっていないということであれば、ぜひ試してみられることをオススメします。受講生にはこの画面が見えているのかっていうのが目の前で見えるのは、講師としてこの上ない安心感を覚えるものですよ。

5. まとめ

本記事では、筆者の試行錯誤(≒散財)にもとづき、オンラインで講義やセミナーを行うにあたって最低限必要になると思われる機材を優先度が高い順にご紹介しました。

新型コロナウイルスの感染拡大になかなか歯止めがかからず、夏以降もオンラインで授業やセミナーをするしかない、しかし使える予算は限られている――なんなら(この記事の筆者同様)赤字覚悟で身銭を切らなければどうにもしようがない――そんな方々は日本全国に、数多くおられることと思います。

そんな(広い意味での)同僚の皆さまに向けて、自分散財しながらみつけたノウハウが役に立てば、望外の喜びと思って本記事を書いてみました。ここまでお目通しいただいたことに感謝しつつ、ここでまとめた内容が何かしら皆さんのお役に立つことを願っています。

九州大学ビジネス・スクール准教授
松永正樹

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