just like a strawberry tart
いちごタルトが好き。
可愛い赤に、つやつやのゼリー。
甘いカスタードと、さくさくの生地。
無敵の装備。
ケーキってホールだと贅沢な気がするけど、
タルトなら断面が見える、あの三角が好き。
ケーキ屋さんに行くと、
そこにはたくさんのケーキが並んでて。
"選ぶ"ことができる。
でもやっぱり、わたしにはこれ。
お決まりのいちごタルト。
大きな本屋さんが好き。
たくさん、ずらりと並んでる本。
思うまま自分の時間を過ごしてるひとたち。
自由でいられる場所。
知らない世界に連れて行ってくれる場所。
星座占いのラッキーアイテムみたいに、
直感的に手に取った本がなんだか素敵に思う。
こうやって、わたしだけの「好き」を選んで
運命かもしれない、なんて思ってみる。
こんなふうに「好き」をいくつも並べてみたい。
これがわたしの特別で、
これがいちばんわたしっぽくて、
これがわたしの全てで、
そういうものばかりを。
いちごサンド。
焼きたてのカリッとしたパン。
ころんとした革のバッグ。
パンのカルテットの絵。
アイスブルーの服。
好きなドラマの好きなシーン。
なんども思い出したくなる短歌。
ここに並べた「好き」は、
わたしから見えている世界だよ。
誰にも認められなくたっていいけど、
褒められたいわけじゃないけど、
君には全部見せたい。
360度、どこからでも。
こんなところが好きなんだ、って。
得意げに話したい。
すごいのはわたしじゃないけど。
へえ、すごい。なんて言ってくれそうで。
それからやっぱり、
君への「好き」も、
ここには飾っておきたいよ。
好きだなあと思うたびに
書き残しておいた付箋も貼りつけて。
頑張らないを頑張るところ。
誰といても、そのままでいるところ。
ふとこぼした言葉が、
ストンと落ちてしまうところ。
ほんとのわたしでいさせてくれるところ。
わたしを、大丈夫にしてくれるところ。
気づいたらいっぱいになっていた。
ピンク色で埋め尽くされたわたしの「好き」は、
あまりにやさしくて、ぎゅっとなった。
だけどそんなふうにしていたら、
付箋で君が埋まっちゃって、
ぐちゃぐちゃになって、
なんだかわからなくなって。
もしかしたら、ぜんぜん好きなんかじゃ
ないような気さえしてしまった。
だから、ぜんぶやめてみた。
知らない街を歩いてみたし、
新しいプレイリストを作って毎日聴いた。
忙しい日々は、君のこと考えないために
ちょうどよかった。
でも、でも。
「好き」の世界は何よりも輝いていて。
ずっとここに飾っておけるかわかんないよ。
目を離したら、カタチを変えて、
ふわりと消えちゃうかもしれない。
でもね、
今はここにある。
時々取り出してみると
あまりにきらきらしていて、
ふふっとわらってしまう。
そういう「好き」が、ここにある。
めまぐるしい毎日は、
心も頭も、だれかのために働かせて。
こんな忙しい毎日も、
大人になった、ってことなのかなあ。
自分の気持ちにいつでも正直にはいられなくて。
難しいことだって考えなきゃいけなくて。
だけど、ここに帰って来たいよ。
今、好きだと思うもの。
今日も、好きだと思えた人。
わたしだけのときめきが詰まった場所。
この世界では、
ほんとのわたしでいてもいいんだ。
恋とか愛とかわからない。
報われる可能性なんてないのかも。
けど、それでも輝いている。
この世界が、わたしを特別にする。
思うまま、心ゆくまで、「好き」でいよう。
わたしはこうやって生きていく。