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サブカル大蔵経954責任編集武田砂鉄『TBSラジオ公式読本』(リトルモア)

コサキンが、芸能界の中で、TBSラジオ史の中で、どう位置付けられているのか?を確かめるために購入しました。

内容は現役のパーソナリティたちへのインタビューが中心で、歴史検証本ではありませんでした。

小堺と関根も少しだけの寄稿でした。コサキン検証そろそろ誰かしてくれないかな。オードリー、ケンコバ、星野源、藤井隆、清水ミチコらに寄稿して欲しい…。

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発売前から伊集院光だけが一問一答形式だったことなどで耳目を集めていた本書。

【伊集院光】僕の番組を僕なりに面白くすることが、TBSラジオにとっても良いことだというのは間違ってないはずと信じているのですが。p.258

本書は貴重な芸能史であり、伊集院の「ですが…」に表されるような、少し不穏な、TBSラジオの終わりの始まりの呪いの書になるのでしょうか。

私が最も印象的だったのは、毒蝮三太夫、森本毅郎、先頃番組終了を発表した大沢悠里ら歴戦のレジェンドにこそ、軽妙とシュートを兼ね備えたプロレス力を感じたことでした。みなさん、こんなにも?というくらい、とにかく闘っていました。

【毒蝮三太夫】でもさ、こっちは、野球で言うと「来る球を打ってる」だけ。定型なんてない。p.272

 まさに常在戦場の対応力。言い訳の多い芸人さんに聞かせてあげたい。

【森本毅郎】僕の一家は、人間の弱みや裏に興味があって、「人生は美しい」や「人間は素晴らしい」と考えにくい質の人間が集まっていたんです。p.48

 噂の!東京マガジンの様相と違って森本さんがかなり現代にチューニング合わせていたのに驚きました。そして、いろんなこと相手に闘っていました。ご兄弟の森本哲郎さんの世界の紀行本も懐かしいです。

【大沢悠里】当時のラジオっていうのはダイヤルを回して聴いていたから、それなりに手間がかかる。p.189

 大沢悠里さんが語るどん底からトップを奪うために切り開いた格闘話芸も貴重。

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【生島ヒロシ】ここに金脈が隠れてたという。p.27

 朝5時の格闘家。昔は「朝からたいへん!つかちゃんでーす」の時間でした。受験勉強明けに、たまに流れてきました。

【ジェーン・スー】「本音なんてどうでもいいんだよ」っていう感じがある。本音を信用していないというか。p.83

 寺山修司が「この世を見下したように、化粧している人が好きだ」というようなことを本に書いていたことを想起。ジェーン・スーに寺山イズムを感じました。

【赤江珠緒】宮大工の祖父が山伏みたいなこともしていて、子どもの頃から人を弔う行事に接することが多かったp.114

 死と身近に付き合ってきたた赤江一族。局アナでは収まりきらない雰囲気の謎が少し解けたような…。

【外山惠理】波風立てない人が多すぎるんです。p.303

 六輔イズムの伝承者は外山惠理だった。

【小西克哉】私自身は「コラムの花道」は報道特集だと勝手に決め込んでいた。/吉田さんは芸能人が反論できない芸能ジャーナリストだと思うし。p.326

 吉田豪をジャーナリストと捉えてくれる人を初めて見ました。小西克哉の慧眼。

【神田伯山】そうやって、権力を批判する砂鉄さんも権威化しているところはあるのかなと。/「褒め合っていて気持ち悪い」って思ってる人に喜んでもらいたい。/内輪感がすごくてたじろいだんです。でも、3回ぐらい聴いていたら、その内輪感がたまらなくなってきたんです。p.338.345.349

今私が唯一聴いているラジオは「問わず語りの神田伯山」なのですが、本書でもラスボス的な登場というか、「KAMINOGE」でのマッスル坂井のような登場をする伯山先生の信念と言葉の力がすごすきます。

著者の武田砂鉄にすら仕掛けていき、砂鉄さんの空洞化を防ごうとしてくれている。こんな誰もやらないめんどくさい優しさを持つ人はなかなかいないと思いました。

正義の怪しさや、権威の萌芽への敏感さ。こないだ『2016年の週刊文春』を読み終わった時、この左右にこだわらない文春砲は神田伯山ににているのでは、と思いました。ひとり週刊文春。

コサキンを語る伯山も嬉しかった。初見で判断しないという理知性。やはり伯山先生は、昨日の放送でも経営学部出身を自虐的に語っていましたが、その学部での知見が冷静な自己運営に結びついていると思いました。

【武田】駄目話そのものを聴きたくないというか、その駄目話の巧妙な管理に対する嫉妬かもしれないですね。【伯山】吉本さんの芸人がラジオでしゃべってるのが、あんま好きじゃないってことですか。【武田】それ、ほぼ誘導尋問ですね。【伯山】でも、そういうことですよね。テレビだけでやってよって。p.352

 名コンビだなぁ^_^


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