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サブカル大蔵経910恩藏茂『「FMステーション」とエアチェックの80年代』(河出文庫)

高校の時、深夜放送のコサキンに出会い、人生が変わりました。受験勉強しながら、オールナイトニッポンの一部(コサキンの水曜以外)と二部を全部聴く生活になりました。月曜がデーモン閣下と辻仁成、火曜がとんねるずと白井貴子、水曜二部が小峯隆生に伊集院光、木曜日がたけしと寺田恵子、金曜日がサンプラザ中野と中村あゆみ、土曜日はABブラザーズといんぐりもんぐりだったかな?零時からはSTVのアタヤン。木村洋二、田中義剛、明石英一郎はANNに負けてなかった。実際に、義剛はANNの土曜2部に抜擢されました。あと、ANN二部が面白くない時は、歌うヘッドライトと5時からの「榎さんのおはようさ〜ん」聴いて寝るパターンでした。

今たまにANN聴くと、二部の人が始まる時に、一部のパーソナリティに対して、お疲れ様でしたー。と挨拶から始まるのを耳にしました。あれは白井貴子しかやってなかったと思うんだけど、そういう文化になっちゃったのかなとびっくりしました。「タカさんノリさんお疲れ様でしたー」って。たまに二人が乱入したこともあったような。

深夜放送を知る前は、ラジオはカセットテープに曲を保存するためのツールでした。レコードやCDを買うのではなく、無料で曲を採る。そして、自分だけのテープが出来上がる。あれが、最初の〈編集〉だったのかもしれません。

テレビに取って代わられると、ラジオは、トランジスタによる小型化もあって、自動車や自分の部屋などプライベートな空間のみ楽しむ媒体となった。p.34

たしかに、テレビは家族で見るもので、ラジオこそ〈私のメディア〉でした。中学の時に、たしか木曜日の夜、神谷明の洋楽番組「ベストリクエスト」をラジカセでエアチェックしていました。

エアチェックもなかなか集中力を必要とする。片面が終わるといったんテープを取り出して裏返さなければならない。そのタイミングがまた難しい。曲の途中で裏返すハメにならないように、切りのいいところで一度録音を停止しなければならないp.119.120

あの時は洋楽の歌手も顔もわからないまま聴いていました。ペットショップボーイズ、ブライアンアダムス、Mr.ミスター、ヒューイ&ルイス、シンディローパー…。本書の主役、FMステーションやFM誌は買いませんでした。あの頃は本屋にも行かなかったし、コンビニは、地場の商店に毛の生えたような店しかなかったと思います。

よーし、ケンカだケンカだ!(しかし、ケンカ相手が多くて胃がもたなくなるなぁ!)ただ、広告部には申し訳なく思っていた。p.101

本書を読み終えて思ったことは、著者は、プロレスマスコミで言えば、週刊プロレス、ターザン山本のような方でした!ここにももう一つの週プロがあった!と思いました。本書では敵は、製品メーカー、レコード会社、放送局でしたが、どの分野でもゲリラ的に闘い、そして主流に躍り出て、そして使命を終えて去っていく方はいるんだなと…。しかしこうやってお世話になった過去を持つ方はたくさんいます。希望は過去にしかありません。

あと、ブライアン・アダムスのいい話も聞けました。

軽くてゲスで懐かしい感じ文体が、あの頃にわれわれを導いてくれます。

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時代はまず、一九八〇年にさかのぼります。山口百恵が結婚のために引退して、入れ替わるように松田聖子がデビュー。p.10

もう始まりは、『史記』のよう。

フォークが市民権を得たともいえるし、貪欲でかつ懐の深い芸能界(体制側)に取り込まれたともいえるが、p.50

今読んでいる編曲についての本の中でも、フォークと歌謡曲の軋轢と歴史が描かれていました。〈取り込む〉ための編曲者だったのかも。

レコパルには高橋留美子の「うる星やつら」「めぞん一刻」のカセットレーベルが付くこともあった。p.82

今年うる星やつらが復活します。私も何かの付録でうる星やつらのカセットレーベル使いました。アニメディアだったかな?

アイドル歌謡とはいうが、そのサウンドメイクは日本のポップスや洋楽のヒット曲と、もはや変わりはなかった。前章で述べたように、作詞・作曲・アレンジともニュー・ミュージック系の才人たちが手がけるようになっていた。p.91

アイドルを特集したFMステーション。「FM fan」「週刊FM」「FMレコパル」の後発誌。この辺も週プロ的か。

「番組はリスナーのためにあるのだ。FM誌の番組表締め切りのためにあるんじゃない」とよく言っていた。ごもっともです。ごもっともですが、そこをなんとか……p.116

番組表という今思えば異常な執念の世界。ある意味、プロの職人の世界。時刻表の世界と重なるような…。鉄道乗るのも、時刻表を制覇するために乗っていました…。

ぼくはJ-WAVE側の話を聞きながら、「これでFM誌も終わりかもしれないな」とはっきり意識したことを覚えている。p.221

この業界に対する冷めた第三者的な破滅の感覚も、ターザンを彷彿とさせます。

「おまえら音楽誌は、おれたちに言われたとおりの記事を書いてりゃいいんだ!」これが少なくともXレコードの本音なのだ。p.256

事務所のマネージャーの放つ言葉。これ、まさに長州力ですよ!

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