サブカル大蔵経980中上健次『枯木灘』(河出文庫)
関わりたくない物語を覗く感覚。その忌避は自分そのものでもあった。
「わしの子じゃ」/その時、秋幸は随分昔からその言葉を聴きたいと待っていた気がした。p.183
この辺り、ゲンドウとシンジっぽい。中上健次の刻む〈サーガ〉は、エヴァか?
父親と、徹の存在が、気になりました。秋幸と秀雄は、父を取りあい。
徹は秋幸が疎ましかった。/徹は自分の心変わりが不思議だった。p.363
追いかける者が疎ましくなる。いつも突然に。徹は擬似兄貴を求めていたのか。
河出文庫の存在の奇妙さと貴重さに感謝。
帯と栞のスケラッコのイラストに感銘。
何回も家系図を見直しながら。
石碑は男の永久に勃起しつづける性器だった。p.199
人が石碑を建てる理由。墓も同じか。
「おまえの、弟を、よお」美智子は叫んだ。p.71
「おまえ」と言う男を嫌うこの時代、女の方が「おまえ」と叫ぶ。
自分が無意識のうちに避けてきたもの、母や母の子の兄や姉たち三人、義父や義父の子の文昭が、秋幸がそれに向き合うことを回避させてきたことが、ついにいま目の前にやって来たことを知った。p.73
百閒の解説で種村季弘が述べた〈気配〉という避けてきたものがやって来た。それを仏陀は〈如来〉と言うのかも。私も父が亡くなって現れたかもしれないし、これからさらに現れてくるのかもしれません。
「勝手に孕みくさって、勝手に喧嘩しくさって」p.86
言葉のエンジンかかってきた。本書は車やバイクの描写が繰り返し出てきました。
フサにまた新しい男が出来ていた。p.99
〈家族〉と〈性〉の位相が超越する物語。
自分の体のどこにその秘密が隠れているのだろうかと思った。眼にか、それとも胸の中にか、性器の中か。p.151
隠されているという思い込みではなく、身体感覚と血縁という事実。
この路地のにおいをよp.256
韓国映画「パラサイト」を想起。
痛みに呻いているとも、倒れたまま悲嘆にくれているとも見えた。p.320
秀雄の呻きを、カルナを、慈悲を。
男にも人間の感情があったのだった。p.333
この父を、いまだ作者は、捉えきれていないのでは。
「反復」の自覚のない者こそ反復してしまう。(柄谷行人解説)p.412
いろんなことに当てはまる言葉。
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