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サブカル大蔵経873『明治維新とイギリス商人』(岩波新書)

「青天を衝け」で、今回は岩崎弥太郎と五代友厚が退場しました。彼らの背後にいた男の伝記、いや伝奇ともいうべき生涯。

グラバー、史料では「ガ印」p.4

五代曰く「ガラバ」。

冒険的なスコットランド商人インドへ。p.15

〈政治好きな商人〉の痛快さと哀しさ。

長崎の小さなグラバー園の深淵さを想う。

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横浜は輸出超過。江戸から離れ支配力の弱い長崎は輸入超過。ゆえに、薩長土肥の西南雄藩にとっての武器購入市場となった。p.50

 同じ開国港でも、地域により存在する差異があったんですね…。

長崎居留人口は欧米人91人・中国人116人。p.54

 以前長崎を訪れた時、西洋と中華が同居していることに驚きました。

日本茶の輸出は、長崎の茶商大浦ケイが嬉野茶の見本を海外に送ったのが最初。生糸につぐ重要輸出品。p.56

 嬉野茶が日本を支えていました。

薩英戦争後、イギリス海軍キューパー提督が居留地の商人・商社を批判。「恥ずべき事実、あまりにも無節操、日本人に武器弾薬を供給。」p.69

 本国からも批判された武器商人達。それと交渉した薩摩。五代も暗躍。

茶の再製・輸出から、艦船・武器販売へ経営拡大。p.72

 マセソン商会の代理店に過ぎなかったグラバーの経営方針変更。イケイケ。

1866年には日本最大の外国商会。p.74

 渋沢・三井・三菱の少し前を歩んだ坂本龍馬・五代友厚の後ろ盾。

保険・船舶保険・銀行の代理店p.76

 今日の「青天」でも、三菱が乗船者の保険を独占していると描かれていました。

1864〜68年に艦船24隻を売却。薩摩6.熊本4.幕府・佐賀・長州各3隻。p.87

 武器商人の面目躍如。満遍なく。

番茶は普通茶の5分の1の関税。中国商人は質の悪い茶を番茶と称して輸出し、再製して欧米に輸出。p.146

 値踏みされた番茶が欧米へ駆ける。

高島炭鉱開発、信念。p.159

 エネルギーへの傾斜がグラバーを陥れた。東芝や日立の原発への投資が、本社を傾けたことを想起。

倒産後、鹿鳴館書記、三菱顧問。p.194

 マセソンにクビを切られた後、日本での第二の人生が始まる。

ビール会社設立。岩崎弥之助、渋沢栄一、益田孝、大倉喜八郎の出資を得て1888年からキリンビール販売。p.199

 まさに今日の「青天」の〈合併〉を象徴したものがこのキリンビールでしょうか。

1908年、勲二等旭日章。1911年麻布にて73歳で死去。妻ツル。息子富三郎、娘ハナ。墓は長崎の国際墓地。p.206

 グラバーは、黒幕とか、死の商人とか、陰謀論が語られますが、本書ではマセソンや政府との板挟みでもがく姿が印象的でした。

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