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サブカル大蔵経398 澁澤龍彦『少女コレクション序説』(中公文庫)

 学生の頃、本を集めるということを始めたのが、澁澤龍彦の河出文庫シリーズでした。その中で、中公文庫で四谷シモン人形表紙の本書が印象深かったです。

小鳥も犬も猫も少女も自らは語り出さない受身の存在であればこそ、私たち男にとって限りなくエロティックなのである。p.12

 博物的少女。変わるもの変わらないもの。

マンドラゴラから〈植物=人間〉まで、ワクワクから〈植物=動物〉まで、すべては私たちの未知なるものに対する好奇心、エキゾティシズム、空想力が産み出したところの夢と幻想の精華…p.205

 私にとって澁澤龍彦を読むことは、人間の想像力の極北を知る作業でした。

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もっともポピュラーな自動人形は何かといえば、寺院の塔に付属している時計の鐘を打つ金属製の人形「ジャックマール」である。p.33

 澁澤や種村季弘の本で、〈自動人形〉(オートマタ)をたっぷり浴びてきました。人間と人形の間。そして今やAI。

アリスとは、独身者の願望から生まれた美しいモンスターの一種p.38

 読むほどに怖いキャロルとアリス。

私にとって、私自身の「娘」とは、まさにこのユートピアにも等しいものなのである。それはこの世に存在してはならないものなのである。/もっとはっきりいうならば、私にとって、娘という存在は、近親相姦の対象にするためにのみ存在価値を有するものp.62

 昔勤めていた専門学校の授業のレジュメで澁澤龍彦の文章を紹介したら、生徒のレポートに「この人は、頭おかしいんですか?」と書かれていて衝撃を受けたことを覚えています。〈花のめしべは露わになった女陰〉という文章でした。そうだよな、その方が真っ当な感覚だよなぁ…。と当時思わされました。少し澁澤幻想が醒めた瞬間でもありました。

ポルノグラフィーの特徴。〈誘惑〉は教育ということの別名だ。p.88

 誘惑…、教育や宗教の本質かも。

宝石などもそうだが、それ自体では人間の生活に何の役にもたたない奇妙な物質が/産出量がごく少ないというだけの理由でp.158

 有用性を持ち出す人は、澁澤龍彦を浴びてないんだな、とわかります。

ジャンヌは、しばしば乳房のあいだにマンドラゴラを隠し…p.176

 ジャンヌの胸の谷間にマンドラゴラ。

中世の動物誌『百科宝典』。マンドラゴラを食う象の話。p.180

 架空動物と実際動物の間にあるもの。科学で分けている今よりも豊かな博物時代。

アダム(キリスト)の断末魔の痙攣による射精からも、やはり同じような植物が誕生すべきではなかろうか。p.187

 罪人と神と射精と植物の誕生。

人間の代わりに犠牲になったのだから、儀式にのっとって、手厚く葬ってやるべき。(エリアーデ)p.194

 マンドラゴラ抜く時に死んだ犬へのコメント。エリアーデ爺さん優しいです。

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