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サブカル大蔵経232『ちくま日本文学全集 寺山修司』(筑摩書房)

〈ちくま日本文学全集〉の存在が好きでした。出版史に残ると思いました。

寺山修司の巻。戯曲、短歌、競馬、エッセイ…。それらを貫くものは何か?

私は天井桟敷などはリアルタイムで知らないので、もっぱら文庫本や、タモリの物真似を動画で見たくらいです。

しかし、そのたたずまいや、残した言葉、劇団の雰囲気などを通じて、惹きつけられるものがありました。

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マスオの場合はいわゆるナカモチの養子であり、カツオが成長するまでの仮の家長。p.89

 寺山修司の見つめる〈家族〉

あらゆる笑いは、政治化される要素をはらんでいる。しかも、笑う人間は、いつでも正義の側に立っていると信じている。p.161

 笑わないことを語る寺山修司の映像をYouTubeで見ました。その姿は、少し笑っていたような…。社会背景や個人の奥底にある汚れをあぶり出す鋭さの裏にある〈照れ〉だろうか?

世界中の電球が消えたら、一匹の猫を探し出せ。p.191

 犬と猫の詩。

食堂の常連のニコヨンに金をつかませて強姦させたんですよ、京浜東北線の線路の上で。p.263

 覗く東北の文字。寺山後継の劇団や音楽の後継にないものは〈東北〉なのかなと感じました。そう考えると人間椅子か「あまちゃん」かなぁ。

釘の頭のつきぬけた位牌の裏に目をすえて家畜殺しをじっと見た南無阿弥陀仏のあなた!p.412

 手触りのあるモノへの愛情と、虚飾を剥がそうとする言葉。戯曲での、デブ子とかマリーとか、日本の作家で人物の名付けが上手いのは富野由悠季と寺山修司かな?

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