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サブカル大蔵経178Pen編集部『石ノ森章太郎とサイボーグ009』(CCCメディアハウス)

    なぜ、巨匠・石ノ森章太郎のマンガは、その業績に比して語られづらいのか。

 現在まで後継が続く仮面ライダーと秘密戦隊ゴレンジャーの原作者。キカイダーやロボコンも含めて、以後全ての子供たちが石ノ森チルドレンといえるのではないか。しかし、あくまでも原作者としての範疇を逃れることは出来なかったのかもしれない。

 代表作の『009』は、掲載誌の流浪ゆえか、固定ファンが作られることが難しかったのだろうか。『HOTEL』や『マンガ日本経済入門』で漫画ファンは離れたのだろうか?「萬画」の提唱、「だヨ」などの吹き出し外の台詞の多用。私たちのイメージする漫画家の範疇に囚われない巨匠に私たちはついていけなかったのだろうか。

 石ノ森は、ロボコンやキカイダーなどの特撮作品の原作を貫けば世界最大のサブカル漫画家として伝説になっていたのかもしれない。しかし萬を描こうとしたその業、現代のわれわれに受け継がれているのだろうか。トキワ荘が観光地として復活した今、そのメイン人物である石ノ森章太郎の膨大な足跡を本書で辿りたい。

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トキワ荘は、おんぼろアパートではなかった。寺田ヒロオも売れっ子だったし、藤子不二雄も二人の利を生かして仕事量を増やしていたし、ワタシも入居当時から大学初任給程度には収入(少女クラブに描いていた)があった。赤塚不二夫は最初の頃、ワタシの部屋に居候していたのだが、それも、仕事がなかったのではなかった。少女マンガの単行本の仕事がイヤで、筆が進まなかっただけの話。(中略)一様に貧しかった印象になったのは、当時のハイテクメカであるテレビや8ミリカメラやテープレコーダーを買い、映画を見に行き、モデルさんを雇ってデッサンの勉強をしたり、貪欲に(無意識にではあったが)自分に投資していたのである。p.11

 石ノ森の述懐を読んで、あらためて石ノ森と赤塚のコンビがマンガ史において奇跡的すぎると感じた。

ロボットは人間に近づこうと発展するのに対し、サイボーグは機械に近づこうとするのではなく、超人に近づこうとする。それは神に近づこうとして遂には超えようとする人間の傲慢さのあらわれだ。p.53

 石ノ森のあふれでる知識が、作品に奥行きを与えたのか、難解にしたのか。

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