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サブカル大蔵経679村上春樹『女のいない男たち』(文春文庫)

普段書かないという〈まえがき〉から始まる本書。

『ドライブ・マイ・カー』は実際の地名について、地元の方から苦情が寄せられ、それを受けて別の名前に差し替えた。(まえがき)p.14

中頓別に行ったことのある人はどのくらいいるだろう。道民でもよほどの縁がない限り行かない地域です。そこに着眼した村上春樹の鋭さは私をざわつかせる。私は村上春樹の本質は〈紀行〉だと思っています。

彼女は北区赤羽のアパートに住んでおり、本籍地は北海道**郡上十二滝町、(「ドライブ・マイ・カー」)p.38

本作は映画化されましたが、ロケ地は、東広島市だったそうです。

表紙に覚えがあると思ったら、マイケル・ケンナさんでした。北海道と仏像の写真集を先日買ったところでした。

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「どう言えばいいんだろうな。いったん真剣に演技を始めると、やめるきっかけを見つけるのがむずかしくなる。」(「ドライブ・マイ・カー」)p.47

 少女漫画的な会話を感じました。村上春樹作品の会話の変遷を考えてみる。

「ロッテに同じ名前のピッチャーがいた」(イエスタデイ)p.75

 木樽!ヤクルト以外でロッテの選手が出てくることの意味。この頃は東京スタジアム本拠地か?神宮と千住を結ぶ線。

彼女の微笑みは本物であるにはいささか素敵すぎた。(「イエスタデイ」)p.115

 装いと本質。真実とは?

僕らはみんな終わりなく回り道をしているんだよ。そう言いたかったたが、黙っていた。(「イエスタデイ」)p.120

 回り道こそ真実への道か。

鉛筆とタンポン、と羽原は思った。日誌にそう書いておくべきかもしれない。(「シェエラザード」)p.200

 掲載誌が違う異色作品。贅沢な短編。

ここは彼が進んで責任を取らなくてはならない場所なのだ。(「木野」)p.236

 坂田靖子みたいな題名と思いました。村上春樹の描くバーの雰囲気が好きです。

しかし木野はその熊本の狭苦しいビジネス・ホテルから、なぜか腰を上げることができなくなっていた。(「木野」)p.268

 ビジネスホテル好きにはたまらない描写です。村上春樹の描く〈ホテル〉。

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