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サブカル大蔵経653知里真志保『アイヌ文学』(元々社・知里真志保を語る会)

アイヌのアタルヴァ・ヴェーダ。貴重な知里真志保のノート復刻本。樺太まで含めた各地方ごとの説話、方言の違いも詳しい。

アイヌはひとつではない。和人向け・観光向けでない元祖感たっぷり。ウポポイもこれくらい呪術的に振り切ると面白いかも。

カムイユカルに出てくる神々は動物神が多く、それらの動物神は、神々の世界では人間の姿をしていながら、人間の世界に現れる際は、動物の姿をしている。人間でありながら動物でもある。p.217

 神と人と動物と。和人とアイヌの民族を分けるものは、野生の思考なのだろうか。

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目にゴミが入った時は…と細かいです。

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樺太の真岡では、沖に出て時化に会ったとき、イケマという植物の根を噛んで、エ・ラムフ(おまえの心を) アン・ライケ(殺したぞ!)と唱えて吐きかければ、雲霧も治まると信じていた。p.6

 一昨年真岡に行きましたが、昆布売ってたなあ。噛みつけばいいんですね。

赤ちゃんがくしゃみした時の呪文。美幌では、「糞帽子 かぶった」。p.21

 くしゃみ呪文は世界各国でありますね。あえて汚い言葉で赤ちゃんを護る。

スズメを捕らえてきた子どもらは、その頭の毛をつまんで上下しながら、
saapo tapkar kiy-kiy ekotanun tapkar
姐さん 踊り 踊れ踊れ お前の村の 踊り
kiy-kiy
踊れ踊れ  p.40

 スズメの頭をつまんだ子供。

樺太の説話には非常に踊や歌が多い。岸で女(魔女)が踊りながら歌っていた。
お前さんの舌を こっちへお出し
しゃぶってあげれば 心もとろける
仲良くしましょう(フレニトー)
そこで男は舌を出した。すると女はそれをしゃぶっていたが、そのうちに突然歯を使ってそれを噛み切ってしまったので、男はそれっきり気を失ってしまった。p.54

 ヴァギナ・デンタータの変異が樺太に。

飼熊を絞め殺した後、悪魔払いのためにクルミまきをする。p.68

 クルミの力。固いからか?

近文にエルムウポポ(ネズミ踊り)という遊びがある。

 知里さんゆかりの近文からはネズミ踊りでした。

イフムケ(子守歌)。ルルル、ロロロとか、短い他愛ないが、中には夫に対する嫉妬の情をぶちまけたものなど、疱瘡紳に対する恐怖の情等、とうてい子どもに聞かせるべくもないようなものが多い。p.95

 子供に聞かせられない歌詞こそ子守唄。物凄いアリバイ。魔の伝達。赤子に届け。

アイヌの考えによれば、鳥や蟲などがそれぞれ特有の歌曲を有しているように、人間の男女もそれぞれ自分特有な歌曲を持っている。p.98

 このフラット感素敵。人の鳴き声。

英雄詞曲ユカル。もとは神謡の名称だったが、胆振日高では人間のユーカラ。ユーカラとはアイヌ語から日本語に取り入れられた外来語で、ユカルが正しく、せいぜいユーカル。ユーカラとなると、それは樺太の語で、歌の意になる。p.120

〈ユーカラ〉すらも和人向けなんですね。

むかしばなし 山姥嫁入り 
舌を刺し殺して蟲に扮した山姥が舞うのを見て婿が妹娘に本当に姉かと尋ねた。舞いぶりで見ると姉ではない、私の村の山姥に違いない!男は山姥を殺し庭の塵捨場に投げ捨てた。鴉がそれをつついてケヤヤ!と鳴いた。p.195

 何となく悲しい。山姥の元の姿は…。

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