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サブカル大蔵経811田崎史郎『安倍官邸の正体』(講談社現代新書)

この本を読んで、安倍首相に寄りすぎている、批判が足りないと思われる方が多いかもしれない。しかし、それでも権力構造を解明し、伝えることがわれわれの最大の使命であるという私の確信は揺るがない。p.246

田崎さんは、ネトウヨからもアベガーからも嫌悪されることを自覚されているが、このたたき上げ感とバランス感覚は重宝されるのも納得。名ヒールレスラーか、貴重な悪徳レフェリーですよ。

安倍政権を評するにしても批判するにしても、まず実態を知らなくてはならない、というのが私のささやかな信念である。p.19

本書のおかげで、以降、菅さんや今井さんの動きを注視しながら現在に至ります。

今回の自民党総裁選、それぞれの陣営で暗躍しているのが、安倍、今井、菅なのが、興味深いです。

チーム安倍の成功体験はどこまで有効なのか。

安倍をウォッチしていて、大胆さを通り越して神経が相当図太くなったと感心した。p.246

権力者のスポークスマンと揶揄されるが、田崎ウォッチをしていると、権力者との距離感をどのくらい取っているのかがファンタジーで、プロレス的にたまらない。安倍さんに学んで図太くなったような?

最後に妻、眞由美に感謝の言葉を捧げたい。ありがとう。p.248

私は何となく田崎さんを応援したくなります。意外と政治家に使い捨てられそうな気がして。菅政権で同じひるおび!に出ていた柿崎さんが首相補佐官になった時の置いていかれたような顔が忘れられません。

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政権側の隠し廊下を通って首相執務室に集まってくるのは官房長官菅義偉、副長官の加藤勝信、世耕弘成、杉田和弘の4人。これに執務室隣の秘書官室にいる首席秘書官今井孝哉が加わって計6人で正副官房長官会議と呼ばれる会議が開かれている。p.29

最初読んだ時〈毎日五分の顔合わせ会議〉の重要性を認識しました。これが安倍さんの凄みであり、安倍官邸の特色であり、すべてと言えるような気がしました。菅と今井の飛車角。杉田さんが引退した後残る加藤・世耕両名の動きが怪しくなりそう。次を狙う焦りも出そう。

雑談のことも多いんだけど、人間雑談することも大切なんですよ、とってもね。呼吸が分かるんです。何考えてるのかなぁとか、何か困ったことがあるのかなとか。p.30

 安倍首相の人たらしの極意か。ここまで洞察できる能力を持っているのに、自分のことをいじられるのは何故嫌なのだろう。

政治は言葉によって動く。よほどのことがない限り文章が作成される事はなく口頭了解が政治の日常風景である。だから政治に誤解はつきものだ。p.32

 この誤解を紐解くのが田崎イズム。しかしプロレス雑誌的に言えば、レスラー寄りのゴング的解釈か。

カジュアルな雰囲気で行われ、安倍が時々チョコレートやクッキーを出してこれ、食べようと勧めることもある。p.34

 この文章は当時衝撃的でした。

論争に勝って票逃げる、p.112

 安倍さんが心底感じたルール。だから論争はしない。論争に意味を感じていない。

「あの時、田崎さんがああ言ったから」p.127

 30年以上の付き合いの石破茂さんに著者が相談されたこと。

「人事は求めず、拒まず。」私も時事通信社入社2年目で埼玉支局移動に対し不当労働行為で会社を訴えたことあるので、あまり大きなこといえないが。p.128

 労働闘争の田崎さんの過去もチラリ。

行動を起こす前におかしいと思う感性。菅と話していると、これっておかしいでしょ?とよく聞かれる。p.183

 携帯電話値下げ報道見た時、この文章を思い出しました。

パウエルの本を参考にしている菅義偉。あれを読んで気が楽になった。「彼らは質問を選べる。君は答えを選べる。答えなくない質問には答えなくていい。p.186

 だから、答えない。理由がある。


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