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サブカル大蔵経846菊地浩之『日本の地方財閥30家』(平凡社新書)

今の大河ドラマは、明治初期の三井や三菱が描かれていて、とても面白い視点です。貴族や武士だけでなく、商人が時代を動かそうとしていく。

本書は、各地で有力者として存在する地方財閥と呼ばれる方たちの紹介なのですが、意外と広範囲に血縁で政治家や学者と繋がっているのには驚きました。

ある意味、日本の権力者が炙り出されて、タブーなのかなと思いました。

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【甲州財閥・根津喜一郎】根津はまず、1903年に倒産寸前の東武鉄道を回収。巨費を投じて鬼怒川まで延長、さらに浅草まで東京地下鉄道と結びつけた。鬼怒川温泉ホテルも作った。p.24

 「東武鉄道」という独特の存在感の頭目が甲州財閥。甲州に財閥があることすら知りませんでした。会津若松から鬼怒川経由の浅草という謎ルートの背景の香ばしさ。昔、このルートを乗り継いで、最後に浅草に着いた時の不思議な感触が忘れられないです。

安田財閥系図に「網野善彦」p.33

 一番財閥と遠いイメージでしたが…。さらに中沢新一さんともつながりますね。

高島屋創業者・飯田家の4代目飯田新七は、東京への出店、店舗の百貨店化と高島屋の近代化を成し遂げたが、その成功の影には母、歌の支えがあった。歌は女傑として知られる。新選組の旗を受注する一方、勤皇の志士とも交流があり、特に桂小五郎夫人・幾松と親しかった。p.43

 江州財閥。近江商人。高島屋の高島も琵琶湖の地名から。武士と渡り合う交流。

民間出身の皇太子妃の誕生は、全国にミッチーフィーバーを巻き起こした。ところが地味で堅実な社風の日清製粉はそれをPRすることもなく、膨大な社史の中にもご成婚ついては1行も触れていない。ご成婚はあくまでも正田家の出来事で、日清製粉と無関係という姿勢のようである。正田家が天皇家と縁続きになったことで、日清製粉は積極的にリスクを取る形ができなくなったとも言われる。p.164

 正田家の家風と日清製粉の社風。小室さんは、こういうことと比較されたのでしょうか。

孫三郎の長男、大原総一郎(1909年〜1968年)は入学後、このままでは時間の浪費だと退学を決意するが父に止められ退学を断念。卒業後欧州遊学。p.209

 大原家も『青天』に今後登場予定とのこと。母の実家の近所の方が大原家とつながりがあるので、大原組がどんな描かれ方をされるか楽しみです。

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