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サブカル大蔵経820坂野潤治『西郷隆盛と明治維新』(講談社現代新書)

現在の大河ドラマで博多華丸が演じる西郷隆盛。今作は薩長寄りではないから、西郷の姿が客観的に描けている気がしました。

逆に本書は好き嫌いを前面に出す文章で驚きました。それくらい西郷の虚像やレッテル貼りは強固ということでしょうか。

西南戦争、筆者の筆は進まない。p.186

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西郷好きか、大久保好きか。西郷を丸五年流刑にした久光には嫌悪しかないし、久光に忠勤した大久保にも筆者は好感を持てない。p.56

 ここ最近の大河ではキーマンとしてクローズアップされている感のある久光。

勝にとんと頭から下げ申し候。p.94

 頭を下げることにこだわらない西郷。そして神出鬼没。これは幸田露伴『渋沢栄一伝』(岩波文庫)でも描かれていました。

伊地知が大政奉還に満足しない西郷と大久保を批判。p.101

 土佐側の策謀と言われる大政奉還への西郷と大久保の対応に割れる薩摩。

永井尚志、薩長の二賊を除く。p.125

 「二賊」としての明治維新。

戊辰戦争終。西郷路線は終わる。p.130

 戦争と同時に終わった西郷。勝海舟との交渉に対する批判も吹き出ていた。

薩摩兵と土佐兵の対立。勝が新撰組を逃したと近藤勇を拷問する谷干城p.133

 龍馬殺害の疑念が連鎖する土佐の執念。

黒田清隆、我が樺太の漁民が露兵に銃殺されたと現段階での征韓論否定p.166

 征韓論の判断に黒田が樺太のことを述べていたとは…。日露問題の中で樺太がこの時点で刻まれていた。

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