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サブカル大蔵経905岩田徹『一万円選書』(ポプラ新書)

あけましておめでとうございます。

きっとこれからも本はあなたの味方でいてくれるでしょう。p.146

本の力を伝えてくれる素晴らしい言葉は、

奇跡の物語を持つ書店長さんの言葉です。

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本書を読み、なんとしても行きたくなり、年末、近隣の赤平で法事があったので、帰りに訪問してきました。旭川からは車で1時間ちょっとの距離です。今まで何度も通っていても通り過ぎていました…。

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本屋のお客さんは「消費者」ではなく、「読者」です。p.167

私が棚をウロウロしている間もお客さんが来たり、店長さんと店員さんの会話があったり、不思議な活気を感じました。

京都の三月書房のような雰囲気があって、すごく嬉しかったんです。逆に、地元にもこういう書店があったのに、自分が行かなくなってこういうお店を閉店させてしまっていたのかなと、申し訳ない気持ちにもなりました。

お会計の時に店主さんに話しかけていただき、ミシマ社の雑誌「ちゃぶ台」が置いてあったのに驚いた旨を伝えると、他で置いてないのは売れるんです^_^とのことでした。この後「ダヴィンチ」の取材ということで、あらためてこの書店の存在が全国の書店や読者に、そしてこれからの読者に、何かを伝えてくれそうだと思い、誇らしい気持ちになりました。

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おもしろい本を書いた作家からもらったパスを読者につなげる。p.10

 この欄も毎回そう願っています。

当時の砂川には、三井化学の前身である東洋高圧という会社があって、化学肥料をつくっていたんですね。p.24

北海道の中の砂川市の歴史。今でもこの街だけは国道沿いでもチェーン店が入らず、地元の北菓楼、ほんだ、ナカヤと菓子の名店が揃い、幸栄など札幌や旭川に負けないラーメン店も揃っています。空知地方の炭鉱や産業の街が、北海道というより日本を支えていたというDNAが、この街の人たちに伝わっているのかなと思いました。

本書によれば、いわた書店の前身は砂川駅前の集合店舗、通称紅屋デパート。子供たちの集う本屋だったと。今でも砂川駅の周りは独特の造形の店舗が並んでいます。

「俺みたいなやつが100人もいたら、本屋の経営も安定するべ」p.44

店主の高校時代の先輩からのある提案が奇跡の始まりでした。もちろんそれに応える店長さんの取り組みがすごすぎました。書店とお寺が似ているとずっと思っている私にとって、これは檀家制度のような感じかなと連想。でもここまで信頼され、応えているお寺あるかな。

高山さんは読み終えて「悩んでもいいと思えた」と、自分なりの答えを見つけたようです。p.117

 乃木坂46高山一実の感想。本の力。

「岩田君のとこはいいなあ、店が狭いから在庫も少ないし、田舎で人も通ってないから夜遅くまで店を開けなくてもいいし、競争相手もいない、いいよなあ」って。全部ダメな本屋の条件じゃないかって、笑いましたよ。p.164

 今は亡き、札幌のくすみ書房の久住さんのつぶやき。ミシマ社から追悼本が出ています。『奇跡の本屋をつくりたい』…。

本書読みながら、ずっとくすみ書房のことが頭に浮かんでいたので、実際本書に出てきてびっくりして、やはり、悲しいというか…。でも、このお店には店を閉めてしまった方の想いも、満ちているのかなと。書店を維持することの大変さが両書から伝わるのですが、その後を分けたものは何だったのか、についても考えさせられました。これは書店に限らない、経済や暮らし、現代の社会そのものの問題だと思いました。

選書カルテを介在した本屋と読者の「おもしろい本の教えっこ」とでも言うようなコミュニケーションが、日々何かの物語を紡ぎだしているのです。p.179

 輪読会やビブリオバトルもそうかもしれません。他人の感想がこんなに刺激的とは思いませんでした。

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当日いわた書店で購入した本です。

私の一万円選書でした。

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