サブカル大蔵経699千葉聡『歌うカタツムリ』(岩波書店)
宇宙は身近にあった。
およそ二〇〇年前、ハワイの古くからの住民たちは、カタツムリが歌う、と信じていた。p.1
カタツムリは音を出せるのだろうか。という問いに、最終章、著者は小笠原で聴く。
ハワイのカタツムリたちは、二〇世紀に入ると、わずかな痕跡を残して忽然とその姿を消してしまったからだ。p.1
本書はマイナーな種を教えてくれて、その果てしない多様性に驚かされますが、同時に種があっという間に絶滅することも伝えてくれます。
なぜならこれらは最も役に立たない分野だからだ。p.26
役に立たないと、資金援助打ち切り。
減ったために今度は鳥に見つかりにくくなり有利になって、その頻度が増してくる。p.66
少数者有利の自然選択説。
誰だこの先生。p.166
速水格先生のことを書く辺りから筆がのってきたように思えました。
共通点はなんだろう。それは、どちらも戦っているということ。戦う相手が違うだけなのだ。p.187
捕食者の多い琉球列島と、捕食者少ないから個体数が増えて過密になる小笠原諸島。
農薬を使わない"自然にやさしい生物農薬"をうたった技術。だが、その結末は、アフリカマイマイの減少ではなく、固有のポリネシアマイマイ類の全滅であった。p.193
アフリカマイマイを駆除するために持ち込まれたヤマヒタチオピに。人間のはからいでは計れない生物の世界。
人間の手によって歴史から切り離され、ルールから解き放たれた動物は、モンスターとなり、違うルールのもとに生きてきた世界を破滅させたのである。p.196
モンスターを産むのは人間。
その生き物の研究を通して自然の普遍的な原理を見出したい、という壮大な意欲や使命感に駆られている場合が多いのです。p.201
フィールドワーク・観察の生物学者。なんか心強いというか、最後の砦のような。
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