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サブカル大蔵経816本橋信宏『ベストセラー伝説』(新潮新書)

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『全裸監督』『出禁の男』と、コクのある男たちの評伝で名を馳せた本橋信宏さん。

私は『フルーツの夜』で最初に出会い、『新橋アンダーグラウンド』などの街本を愛読しまくりました。


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ベストセラーは、中堅・新興にあり!

秋田書店、学研、青春出版社、光文社、KKベストセラーズ、祥伝社…。

大手ではない出版社から生み出された異能の人と本の、垂涎のドラマがたまらない。

著者のとにかく幅広い縁を出発点に、貴重なインタビューと、限られた枚数の中での謎ときのような丁寧なまとめ。いつもより優しい筆致で著者の新境地のような。

新潮45最後の連載など雑誌への哀愁も。

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漫画王国、秋田書店を巡る旅が始まった。p.16

昔から秋田書店という出版社が謎でした。他の出版社は総合出版社になのに、秋田書店だけはひたすら漫画…。まさに全身漫画出版社。

サンデーコミックス第一弾はサイボーグ009。売れに売れた。その頃漫画は読み捨て感覚。新書版コミックスとして出す発想はなく、あったとしても数冊。秋田君夫は他社で連載していた作品をサンデーコミックスに収録し、名作のほとんどを手に入れていた。p.35

読み捨てから単行本による保存へ。秋田書店のサンデーコミックスは世界史に残る文化史の画期。

あらためて戦前の小学館が人材育成の場として重要な役割を担っていたp.58

秋田書店、少年画報社など各出版社も小学館出身が多い。日本の出版社の歴史の本をもっと読んでみたいです。

黒塗りの教科書になって、オーナーが俺が作ると創刊したのが「学習」です。教科書の代わりになるものだから学校でもの凄く喜ばれたんですよp.73

「学習」と「科学」はオレ流。私も読んでいたような。付録目当てだったような。

出る単、関西では、しけ単。p.139

北海道でも〈しけ単〉だったと思います。

日比谷高校現役教師森一郎のプリントを青春出版社岩瀬順三が書籍化/改訂はしなくていい。この単語を使わないと試験問題は作れない。p.149.154

あの強気な前書きが印象的。本書を読んでしけ単購入してしまいました。CD付きだったのでしばらく車の中で聴きました。最重要単語の一語目はintellectだったかな?

光文社は講談社の二階を間借り。/櫻井青年がベストセラー作家になると見込んだ松本清張と五味康祐。p.195.196

異能の編集者たちにより、光文社は推理小説を広げました。『山田風太郎推理小説全集』の時も頼りになるなーと思いました。

60年代の女性自身。草柳大蔵、竹中労、五島勉ら手練れの書き手が集結。週刊誌最大部数147万部。p.199

どこかで女性誌を舐めてました。「女性自身」の歴史はダテじゃない。

光文社退社した櫻井は祥伝社を創業。講談社グループを離れ、小学館グループ傘下に入った。p.200

何となく駅のキオスクでよく見た祥伝社ノンブック、巻末の読者感想文用のミニ原稿用紙、あれ、書いて送る人いるのかなと、いつも思っていました。激動の創刊。

1973年、『日本沈没』『ノストラダムスの大予言』ともに編集者は伊賀弘三良(こうざぶろう)。世界でも稀な総部数1000万部。p.203

カッパ・ブックス、カッパ・ノベルズとノン・ブック、ノン・ノベルの伊賀が半村良、菊池秀行、夢枕獏、平井和正、内田康夫を育てた。〈伝奇推理〉も創作語。

サソリの勉。最後まで残って聞く。カスみたいな話、そういう時に本当のことを話す場合がある。p.210

 日本出版史に名を残した五島勉の伝説。

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