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サブカル大蔵経775山田風太郎/サメマチオ『追読人間臨終図巻2』(徳間書店)

膨大な労作にふさわしい労作。

まさに日本文学史の副読本たり得る本。

風太郎先生との距離感がやけに文学的。

原作の版元と同じ徳間なのが何か嬉しい。

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【斉藤緑雨37歳】他人の遺作と自分の死亡広告。斉藤緑雨はそんな人物である。p.24

 樋口一葉を見出し、取り計らう姿。本書では貴重な利他の人の姿。

【辻潤60歳】「僕は自分の生き方がいいかわるいかは知らないが、これ以外に今のところ生きるせんすべを知らないのだ。」

 伊藤野枝の伝記を読んだ後、この言葉に触れると、やはり、大杉、神市を加えたカルテットは日本史に残ると思いました。辻は餓死したとのこと。

【九條武子41歳】「みわたせば西も東も霞むなり君はかへらずまた春や来し」(『金鈴』)。「こんなものは歌ではない!」(与謝野晶子)p.72

 与謝野晶子が酷評したのは、武子が歌人にとどまらない行動をしていたからか。浄土真宗本願寺派がスローガンにしている〈実践運動〉の〈アイドル〉は九條武子なんだと再認識。

【里見弴95歳】「もう飽きちゃったよ」p.78

 本書で紹介されている里見弴の小説「かね」を読んでみたくなりました。

【内田百閒82歳】臨終は「シャムパンをストローですすり、煙草をちょっと吸ったあと」(平岩八郎)p.86

 鉄道のことは思い出していただろうか。

【芥川龍之介35歳】辞世の句「水洟や鼻の先だけ暮れ残る」p.92

 実は脳髄の人ではなく、肉体感の人?

【林芙美子48歳】「あたしなら、こんな濁った川では死なないわ」p.128

 太宰治の葬儀にて。

【円地文子81歳】「私!!!私のが相応しいと思います!!!」p.139

 こういう逸話が文学史には必要だと思いました。もっとみんな文学が好きになるのではないでしょうか。

 今は芸人さんたちが文学者の代わりを務めているのかなと思いました。

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