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縁もゆかりもないこの街を、好きになりはじめている。

学生時代から10年近く住み慣れた街を、離れることになりました。

やってきたのは埼玉県・越谷市。

とはいっても前の家の片付け・引き渡しがまだ終わっていないので、まだまだ2つの家を行き来するのですが、5月末日から拠点を新居に移しました。

「どうして越谷?」
「旦那さんの地元?」

ってよく聞かれるのですが、私は四国、夫は東北出身。
強いていえば、私が幼いころにお隣の草加市に住んでいたことはあるけど、越谷市には縁もゆかりもありません。

ただ、条件に合う物件があったから。
それだけが理由でこの街にやってきました。


前に住んでいた街も、同じく埼玉県。
ですが、前は30秒歩けば東京都に突入できる県境のような場所に住んでいたので、気分はほぼ都民でした。

最寄り駅までは徒歩3分、都心までは電車で20分。
コンビニまで歩いて2分、夜も人通りが多くて明るい。飲み屋も多い。
めちゃくちゃ都会ではないけど、いい感じに便利な場所だったんです。

通っていた大学の沿線だったので、同じ駅や数駅先には友だち・先輩・後輩、知っている人がたくさん住んでいる、いわば「庭」みたいな場所でした。


越谷の新居は、最寄り駅までは一応歩けるけど「自転車がほしいな~」思ってしまう距離。
都心に出ようとすれば電車に1時間くらい乗らないといけなし、コンビニも近くはないし、飲み屋も歩くと結構かかりそう。

「田舎」というほどではないものの、「ほぼ都内」だった前の家に比べると不便も増えました。


でも、そんなちょっと不便で、縁もゆかりもないこの土地を、好きになりはじめています。

まわりの人が、すごくすごく優しくてあたたかいのです。


家から一番近いコンビニのおばちゃんは、夜遅い時間でもいつもニコニコしていて「袋パンパンになっちゃったね~」なんて気さくに話かけてくれます。

楽器を背負って立ち寄ったドラッグストアのお姉さんは「それ、トロンボーンですか?」「すてき!」「私もサックスやってて!」と目をキラキラさせながら声をかけてくれて。

お隣に暮らす可愛いおばあちゃんは、私たち2人が一生懸命慣れない庭掃除をしているのを、楽しそうに眺めていました。


知らない人に優しくしてもらったり、にこやかに声をかけてもらったのなんて、いったいいつぶりだったのだろう。


前に住んでいた街は夜も明るくて便利だったけど、ほかの住人とのコミュニケーションなんてとったことがなかったし、お店の人とだって「袋いりますか?」「温めますか?」の業務的な会話しかしたことがありません。

都心に向かう電車では、楽器なんて持っていたら話しかけられるどころか迷惑そうにされるだけ。

それでもやっぱり、住み慣れた前の街は今もすごくすごく好きなのだけれど。


新しい街に来て、人とのコミュニケーションとか、温かさに久しぶりに触れて「ここに来てよかったな」という気持ちが、少しずつ芽生えはじめています。

なんとなく、ここは前の街に比べると、ほんの少しだけ時間や空気がゆっくり流れて行く気がして。
「あ、もう今日が終わっちゃった」という気持ちにならないのです。


拠点を新居に移してまだ3日、「前の家に帰りたい」なんてホームシックみたいな気持ちになるときもあるけど、ここでまた新しい思い出をゆっくり作っていけるといいな。

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