日本の農業の知的財産を超巨大グローバル企業に明け渡してしまう法律。『農業競争力強化支援法』とは?
2017年8月に『農業競争力強化支援法』というものが施行されています。
これは「農業競争力強化プログラム」の一貫で、日本政府は農業の更なる成長のために「自由な経営展開ができる環境の整備」と「農業者の努力では解決できない問題を解決する」目的で制定したというのです。
ですがこの法律がどのように発展していくか考えたときに、実は日本の農業における知的財産を放棄し、超巨大グローバル企業に明け渡してしまう法律なのではないか?という疑問が湧いてきます。
実際に農業競争力強化支援法の8条4項には以下のように書かれています。
種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。
我々の主食となる主要農産物については、戦後から始まる種子法の下、全国に安定的に優良な種子が提供されるように、国民の税金を使って国が責任を持って守ってきました。※種子法は2018年4月に廃止
日本人の税金を使って長年積み上げてきたノウハウは、農業における私たち日本人の知的財産でもあると言えます。
知的財産権とは本来自分たちの技術と商品を保護するためのものです。
その大事な知的財産を民間事業者に提供しなさい、ということです。
では、果たして本当にこの法律によって「自由な経営展開ができる環境の整備」ができるのでしょうか?
農水省は事業参入する対象を「農業用機械製造事業」と「種苗の生産卸売事業」と定めています。
農業用機械製造事業は言わずもがな、種苗の生産卸売事業についてもそう簡単に始められる業種ではありません。
以下の記事でも書きましたが、そもそも品種を維持管理するためには大変な手間暇とお金がかかるのです。
ちなみに日本で品種を自社で開発している種苗メーカーは約50社しかありません。
その内業界シェアの90%を握っているのが、サカタのタネ、カネコ種苗、タキイ種苗の3社です。
サカタのタネは資本金が135億円、カネコ種苗は資本金が14億円ある上場企業です。※いずれも「日本マスタートラスト信託銀行」のような信託銀行が大株主であることについてはここでは触れません。
要するに、種苗の生産卸売事業ができるのは巨大資本をもつ企業なのです。
世界的なシェアで言うと、上位3社のバイエル(モンサントを買収)・コルテバ(ダウ・デュポンから分社)・シンジェンタ(ケムチャイナの子会社)が30%以上を占めており、日本の企業は1%以下となっています。
もちろんこの法律に書かれた"民間企業"には外資系企業も含まれます。
つまり、これらの"超"巨大資本を持ったグローバル企業が次々と参入し、私たちの知的財産が流出していくということを意味します。
企業とは誰のものでしょうか?
もちろん私たち日本国民のものではありません。
株式会社となっている限り、企業は株主のものであるということはご理解いただけると思います。
つまり本質的に、企業は株主のための利益最大化が最大の目標になるのです。
そのことがいいように働けばよいのですが、世界を見渡すと超巨大グローバル企業が少なくない数の健康被害を多くの市民に与え、訴訟が行われている現状があるということを知ることができます。
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