文殊合成才智スクスフ
戦争が終わったとかで、僕たちは処分されることになった。
まあ、仕方がない。仕方がないことだと僕をガス室に連れてきた兵士も言っていたから、きっとそうなのだ。気がかりなのは、このひどく狭い部屋に置き去りにされてからいつまでたっても殺されないことと――
「スクスフ」
「スクスフ」
もうひとつの気がかりのうち、1、2……二人が扉を開いて現れた。フネヘは手に持った警棒を、ドンゴは僕と同じ白いシャツを血に濡らしていた。
「うー」これは僕の再会を喜ぶ声だ。一人分の脳みそでは言葉を紡ぐのも難しい。それでも二人は優しく微笑んだ。
「時間がない。文殊、入れ」
ドンゴがそう言って僕のこめかみに触れた瞬間、僕の思考は明快になった。彼の言う通り、時間がない。助けるべき気がかりは他にもいる。
「行こう。ここから一番近いのはワンギヤの部屋だ」
「ああ、俺たちも思い出した」
三人集えば文殊の知恵。僕たちは思考能力を共有できる八人の兄弟だ。 【続く】
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