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2019映画鑑賞ログ

 時期です。2019年に劇場で観た映画83本から、特にめちゃくちゃ死ぬほど生きるほど刺さった作品の話をします。
 多分に漏れず俺はまあまあすごい量の映画を観ているが、やはり多分に漏れず誰にも感想を伝えるつもりはない。が、人様のそういう記事を読むのは好きなので、やることにした。内容に頷いたり間抜けを見る顔で肩を竦めたり、心のウォッチリストに加えたりしていただければと思います。

とにかくオススメ

スパイダーマン:スパイダーバース

 迷うことなく2019年ベスト。別格。むしろオールタイムベスト更新。コミック、アニメ、実写映画とこれまで描かれてきたスパイダーマン像をふんだんに生かしつつ、アニメ映画ならではの鮮やかな画面で、家族とは、ヒーローとはという強固な題材を描く大傑作。ひたすらに楽しい。あらゆる部分のクオリティが高く、出来が良すぎてアクションシーンで泣いたりしました。

クリード 炎の宿敵

 一筋縄ではいかない家族の在り方に根性で向き合う。奇を衒わないスポ根ではあるものの、いくつもの人生が一つのリングに収斂していく展開はやや気怠く、その重たさがとても好き。

スノー・ロワイヤル

 2014年のノルウェー映画『Kraftidiote』(邦題『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』)のリメイク作。侮ってはいけない。ブラックな笑い、暴力、見るだけなら美しく生きるには過酷な豪雪地、その生活の切なさ。原作の味を見事に濃くした、完璧以上の翻案。

ガールズ&パンツァー 最終章 第2話
 テレビアニメから始まる一連のシリーズ、しかも未完結の劇場シリーズという極めて評価しづらい立ち位置の作品……そんなことは言っていられない。主人公たちが培ってきた恐ろしいほどの強さと、それに対抗できる相手校の努力を両立して描く。劇場版アニメの理想形がここにある。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

 ヒーローパートと日常パート、どちらも全く退屈させない匠の技。実力、雰囲気、動機すべてが研ぎ澄まされた素晴らしい敵役との、息を呑む決着。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
 なぜこの間合いこの波の少ない展開で面白くなるのか。無知蒙昧の筆者には言語化できない。余人に真似できるとも思えない。出演陣が生み出す何か、それを写し取るスタッフ、そんな制作を断行できる監督の凄まじさ……。

ジョン・ウィック:パラベラム
 壮絶なアクションの集積、実現する技術と努力に神秘的な感動を覚える。ネオン反射する雨のニューヨークと甘く乾いたカサブランカを銃弾と殺意が飛び交い、人が、馬が、バイクが、犬が、ニンジャが走り、キアヌが殺す。美しきノンストップ・キリング・アクション。

ドクター・スリープ
 呪いと超能力の激突、精神ハッキングの仕掛け合い、一切の容赦がない暴力、怪物vs怪物、ヒーローの誕生、人と人の繋がり。強烈な部位が接合した巨獣の如きエンターテインメント。

羅小黒戦記
 
ロシャオヘイセンキ。シンプルで力強いストーリーと美しく爽やかな美術をバックに、クリティカルに可愛く格好いい妖精たちが超作画アクションを繰り広げる。上映数から考えると割合知名度が低そうなので、凄みの掴みやすい動画も貼ります。


コンボでおすすめ
(無関係な作品群に関連性を見出す遊び)

高梨蒼さんの例。とてもわかる。

ヒーローの終着点
 映画界のビッグイベントと化した『アベンジャーズ/エンドゲーム』、どうにもならないなりに精一杯やったX-MEN:ダーク・フェニックス』、三部作ですが強烈な『ミスター・ガラス』。展開の巧緻も含め、ヒーローが辿り着く境地の色々が見えます。広く英雄譚でくくれば『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』も、楽しいドタバタ宇宙活劇として幕を閉じることができて良かったですね。本当に。

双子、ツイン、ダブルのモチーフ
 真新しいとは思えないギミックがなぜ2019年に頻出したのか……自己同一性とか存在意義とかそういう何かが世界的になんかだったのでは? 前出の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は俳優とスタントマンの関係性、『アス』は突如現れたもう一人の自分との死闘、『SHADOW/影武者』は愛憎渦巻く政争とトンデモ兵器アクション、邦画では『影踏み』が亡くした双子の幻影に囚われたりしていました。こうなると『ジェミニマン』を見逃したのが惜しい。

アクションスターの激突
 映画はお祭りなのでスターの共演は付き物ですが、2019年は筆者のアクション理解度が改善したことで特に色々観測できました。何を置いてもイップ・マン外伝 マスターZのマックス・チャン(色気が凄い)、デイヴ・バウティスタ(体が分厚い)、ミシェル・ヨー、シン・ユー、トニー・ジャー。超人オリンピック『トリプル・スレット』はイコ・ウワイス、タイガー・チェン、スコット・アドキンス、マイケル・J・ホワイト、ジージャー・ヤーニン、そしてトニー・ジャー。前出の『ジョン・ウィック:パラベラム』ではマーク・ダカスコス、セセプ・アリフ・ラーマン、ヤヤン・ルヒアンがキアヌに立ちはだかりました。大脱出2は……『大脱出3』を見てないので何とも……。

ドウェイン・ジョンソンはすごい
ワイルド・スピード/スーパーコンボ』『ファイティング・ファミリー』『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

特筆したい何かを観たもの

ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow
 ベスト・スタッフロール入り・エヴァー。物語を描き切り情緒が最高潮に高まったライブシーンから、エンディングに入る瞬間挟まる青空のカット、その美しさと間の取り方はまさに完璧。
がっこうぐらし!
 デッドラインをぶっちぎる冒頭から最後の最後まで駆け上がり続ける素晴らしいエンターテインメント。出演陣のフィジカルもいろいろ強い(穏当な表現)。
サムライ・マラソン
 虚無。マジで見なくて良い。
ハンターキラー 潜航せよ
 主人公の迷わなさが怖い。海の男はすごい。
キングダム
 とても退屈だが坂口拓の殺意ムーブはヤバい。
神と共に 第一章:罪と罰 / 神と共に 第二章:因と縁
 長衣はためくハイスピード空中剣戟、魂の本質に迫る重厚なストーリーと、それでも決して重苦しくならない軽剽なキャラクター。素晴らしいバランスでハチャメチャに楽しい。
ハッピー・デス・デイ / ハッピー・デス・デイ 2U
 死んで生き返って死んで生き返って改心したりしなかったり! 根性とSF! あまりにも楽しい文字通りの死闘。
ある船頭の話
 現世と異界の間で立ち尽くす柄本明。情緒と設定がアンバランスで良い。
見えない目撃者
 人と犬が走るバディ・サスペンス。一挙手一投足に覚悟がみなぎる。2011年の韓国映画『ブラインド』からの翻案だけあり、邦画らしからぬ思い切りの良さで人が死ぬ。
ジョーカー
 好みがどうとか言っていられない。一人の人間が吹っ切れてしまった。

おまけ、劇場外で何かが刺さったもの

ファイナル・マスター(2015、中国)
 石壁での連戦。
デンデラ(2011、日本)
 デンデラー! 雪山激熱老婆集落vs羆! 死が近い! 老婆に風が吹く! デンデラ―!
オールド・ボーイ(2003、韓国)
 冒頭から暴力と愛とモチーフが高濃度で流し込まれ、ごりごり帰結していく。復讐は健康にいい。
メメント(2000、アメリカ)
 天才。
ナラーバーニンフ(2012、オーストラリア)
 結構ちゃんとしてると思いました。
貞子vs伽椰子(2016、日本)
 こんなに楽しい映画があっていいのだろうか。
ゾンビマックス!怒りのデス・ゾンビ(2014、オーストラリア)
 これも結構ちゃんとしてると思う。いやほんとに。
昭和極道怪異聞ジンガイラ 仁我狗螺(2012、日本)
 昭和で極道で怪異聞であることは確か。
怪怪怪怪物!(2018、台湾)
 容赦のない暴力で人間を描く傑作。説得力のある展開を重ねて凄いところに着地してしまった。

未来へ

 2019年も素晴らしい映画とたくさん出会い、またたくさん取りこぼしました。引き続き手の届く範疇から、他の誰でもない自分自身に刺さる映画を探していきましょう。赤の他人のレビューなど見るな。この世で価値があるのはお前の感性と、信頼できる人間のレコメンドだけだ。だがそれさえも固執・盲信するな。銀幕に作品があり、劇場にお前がいる。それだけだ。それだけで良いはずだ。思い出したか。では鑑賞を続けましょう。以上です。

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