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「絶対善」が存在する世界で全ての人を肯定したい

この社会には、誰がどう見ても「善いこと」というのが存在する。

分かりやすい例のため、そういう「善いこと」のために人々の力を借りるような行為を考えてみよう。

例えば、社会貢献とか弱者救済系の、募金やクラウドファンディングのプロジェクトがそう。
『○○ちゃんの命を救う会』とか、『ワンちゃんの殺処分をゼロにしたい』とか、『アフリカの貧しい子供達のために学校を建てたい』とか、
なので皆さん少しずつでいいので力を貸してください、みたいな動き。

もちろん、こういう活動や思いを否定するつもりは全くない。
どれもやる意義があるし、やる価値があると思う(ごく一部の詐欺案件を除けば)。
偶然恵まれた人が偶然恵まれなかった人に手を差し伸べるというのは、素直に理解しやすいロジックだし、いやむしろそこにロジックすらいらないかもしれない。

実際、僕だってそういうものに署名したり、SNSで拡散したり、あるいは寄付したりして支援したことは何度かある。

基本的に、誰だってそれらを「善いこと」だと分かっているし、できる範囲で応援したいと思っているだろう。


だけど、何もしてあげられない人はどうすればいい?

少しでも力になりたいとはいえ、現実的には自分の生活で精一杯で、そんな余裕は無いかもしれない。
自分を見失ってもがいているときに、使命感をもって行動に移している人を見ると、自分は無価値な人間だと感じてしまうかもしれない。
もしも、それが間違っているとか、嫌いだとか思っても、それを口に出すことは許されない空気がある気がする。

大抵の場合、「え、俺は協力するけど、お前はしないの?」なんて言う人は少ない。
だってそれは、「義務」ではないから。
少なくとも、何もしてあげないことで誰かに迷惑をかけるわけではないのだから。
けれど、何もしてあげられない自分に、罪悪感を感じることはないと言い切れるだろうか。

絶対にそれは「悪」ではないなずのだけれど、
その「悪ではないもの」は、「絶対善」と相対した途端に「相対悪」となってしまう

誰がどう見ても「素敵」な、そんな世のため人のための「絶対善」は、そういう暴力性のようなものを孕んでいる気がするのです。


じゃあ、何かをしてあげられる人はそういう「罪悪感」を感じずにいられるのかというと、そんなことはないと思う。

実際に自分がその場に行って手を動かすとか、それはできないけど少しだけお金を送るとか、いやせめてそれをSNSで拡散するだけでもとか、関わり方はいろいろある。
ただ、どんな関わり方をするにしても、世に存在する全ての理不尽に等しく手を差し伸べることは、現実的には不可能なので、例えばちょっとでも身近に感じられるものだけを選んで支援することになる

すると、日本で起きた地震に義援金は送るけれど、ラオスに学校を立てるプロジェクトには募金できない、といった状況にどうしてもなってしまう。

つまり、特定の対象に対して「善いこと」を行うときにはその他のあらゆる理不尽からは目を背けるという、不公平で非情な、しかし致し方のない決断を強いられるのだ。

結果、そもそも何もしない方がむしろ「公平」でいられるという、そんな矛盾さえ生まれてしまう。

もちろん、これも決して「悪」ではないし、誰もそれを責めることなどしない。
けれど、自分の言動の中に「絶対善」と「それ以外」が同居することによって「それ以外」が「相対悪」にもなりうるという事実に対して、我々は無慈悲にならなければ慈悲深く振舞えないのだ。


現代社会で大量殺人を行えば極悪人だけど、戦国時代の武将なら英雄にもなりえる、という話のように、おそらく、この世には「絶対悪」なるものは存在しない。

けれど、「絶対善」なるものは存在する
いや、本来はこの世に「絶対」なるものは絶対に存在せず、したがって「絶対善」なるものも存在しないのだが、
それを「善」としない者を「絶対悪」であるかのように仕立て上げるようなものは、結果的に「絶対善」として奉られる。

「絶対善」は絶対であるがゆえに、それ以外の「悪ではないが善でもないもの」を強制的に「相対的な悪」に仕立て上げてしまう暴力性を持っている。

僕は、「絶対善」とされている一切を「善」だと認め賛同するし、それを決して否定しないけれど、
「絶対善」を振りかざして公に何かを論じるのであれば、それが隠し持っている鋭利な刃物で「悪ではないもの」ですらも「悪」たらしめる覚悟を持たなければならない


僕は、あくまで「絶対善」のために、信念をもって理不尽に立ち向かう全ての人を肯定したい
その動きを阻害するような者を許すつもりはないけれど、やみくもに「絶対善」を武器として振り回すような人にはその覚悟を問いたい。

同時に、「絶対善」に触れて「悪」に仕立て上げられた(ように錯覚している)全ての人を肯定したいのだ。

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