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秋に思い出すのは、懐かしいアメリカでの日々

夢を見た。イギリスに1日行って帰ってくる弾丸旅行だった。
頭の中では、イギリスという設定だったけれど、実際に見た景色は、どこかで見たアメリカのものだった。
懐かしくて、朝目が覚めたとき、少し寂しい気持ちが残っていた。

秋の空気を感じたとき、真っ先に頭に浮かんだのは、アメリカで過ごした日々だった。

お休みの日、朝遅く起きて、まだ眠い頭でコーヒーを淹れる。
ミルクとクリームのハーフ&ハーフが好きで、コーヒーによく入れていた。
朝ごはんは決まってEggoのチョコチップ入りワッフルだ。
6人暮らしの社員寮に住んでいたが、ルームメイトは仕事に出かけているのか、まだ眠っているのか、部屋はとても静かで、パソコンを寝室から持ってきて、リビングのテーブルでのんびりNetflixやYoutubeなどをぼーっと眺めながら、休みの朝を過ごすのが定番だった。
窓から外を見ると、リスが落ち葉の間をせわしなく走っている。
特別なことなどない、平凡な日。でも確かに幸せを感じる、秋の朝。

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アメリカにいた頃、毎日よく本を読んだ。今も変わらないけれど、本屋や古本屋に行くことが一番の楽しみで、日々のストレスやら不安やら、日々忙しい心が唯一落ち着く時だった。
ベッドで、よく寝転びながら、本をたくさん読んだ。

セーターやスウェットが心地よい季節、バスを乗り継ぎ2時間近く離れたオシャレな街に出かけることが好きだった。
おいしいコーヒーを飲み、可愛いお店や大好きな古着屋さんを覗くのが楽しみだった。

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初めて、一人でアメリカを旅したのは2014年の夏。
それから大学生の長期休暇の度、アメリカのいろいろな場所へ出かけた。
アメリカに住みたいと思ったきっかけは、シアトルでインターンシップを経験したときだ。
日本でも、アメリカ人の友人が多かったわたしは、すっかりアメリカの影響を受けていて、アメリカでなら、自分らしく振る舞えると思っていた。

だけど、いざ夢が叶って住んでみると、気苦労が多かったのは事実だ。
広いアメリカの中で、わたしが住んでいた場所はアジア人が少なく、富裕層と貧困層の差が大きかった。
市営バスに乗ると、黒人ばかりで、ほとんどがボロボロの、薄汚れた服を着ていて、ドラッグの匂いがした。
アジア人で綺麗な格好をしている人たちは目立つのか、じろじろと見られることが多く、何度となく、とても居心地が悪い思いをした。
美しいアメリカだけでなく、怖いアメリカもたくさん見た。
嫌な、汚い面もたくさん見た。
良い思い出ばかりではなかったから、日本に帰国してからは、前ほどアメリカに住みたいという思いが強くなかったし、アメリカへの愛が薄れていたのは事実で、もうアメリカにはしばらく行かなくていい、とさえ思っていた。

それなのに、秋の空気を感じる頃、アメリカでよく飲んでいたコーヒーの味や、Eggoのチョコチップワッフルの味を思い出してしまう。
そしてどうしようもなく、外国に住んでいたあの日々を懐かしく思い、また旅に出たいと思ってしまうのだ。

数年後、30歳手前くらいで、ワーキングホリデーに行く予定である。あれだけ外国に住むのがいかに大変かということを痛いほど知り、外国人でいることが辛かったのに、懲りずに行きたくなるのは、そういう性分なのだろう。
その頃、世界はどんな風に動いているのか、今は想像もできない状況だが、いつかまた、きっとすぐ、世界を気軽に旅できる日がくることを願って、今日も切ないアメリカの思い出に浸る。

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