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骨髄バンクレポート

2016年3月現在、日本のドナー登録数45万人。ぼくにも順番が回ってきました。


◆一本の電話◆

 「ドナーに選ばれました。住所の確認です。今も骨髄液を提供するお気持ちに変わりはありませんか?」と電話がかかってきたのは47歳の時でした。なんとなく登録していた骨髄バンクで、型が適合する患者が見つかったらしい。8年間何もなかったのですが、それもそのはず、なんと数百から数万分の一の確率だそうだ。この後同意書などの書類が送られてきて数回の検査、問題なければいざ提供となるようだ。どんな患者さんなのかわからない。小さい子かもしれないし、極悪人かもしれない。命を救うことに違いはないけれど、いいことかどうかはわからない。登録した際は、『誰かの役に立てれば…』とは思ったが単なる自己満足だ。それに…正直怖い。グルグルと色々考えながら帰宅後早速、ネットで調べたが、過去日本の骨髄バンクで事故による死者は出ていないようだ。それに、背骨からとるものかと思っていたけど、腰骨らしい。ええい!死ぬ事以外はかすり傷。このまま行ってしまえ!

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◆同意書◆

 数日後、同意書が送られてくる。いくつかあった登録できないケースにも当てはまらず、サインして返送する。

◆コーディネーターからの電話◆

数週間後コーディネーターになってくださる、女性の方から電話あり。今後のスケジュールなどの説明。

◆初回血液検査◆

翌月、コーディネーターの方との面談と初回血液検査。2009年8月以前の登録の場合、DNAタイピング検査というのが終わってないそうで、これが適合しないと候補から外れる可能性がある。結果は2週間後、うまく適合するといいなぁ。面談自体はあらかじめ郵送されていたドナーのためのハンドブックという小冊子をもとに進められる。詳細説明を聞くと恐怖感も募ってくる。
 先月登録したばかりという友人にも適合通知が来たとの事。8年かかった自分と一カ月で適合した彼女。それぞれだなぁ。同じ患者さんだったりして。周囲にはほかに登録者がいないので心強い。

◆検査結果送付◆

さらに数週間後、第一回目の事前血液検査の結果が来た。 ドキドキしながらあけると手紙が入っていた。 「今回、総コレステロール値がバンク基準を外れたため、末梢血管細胞提供の コーディネートは不適格終了となりました 今回は骨髄提供のコーディネートで進行とさせていただきます」との事。家族と会社のみなさま、申し訳ありません。 7月位まで、ご協力願います。

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◆候補者から外れる?◆

さらに翌月、残念ながら第一候補者ではなくなっているようです。 僕がお役に立てればよかったのだけれど、またの機会にですかね。 いずれにせよ、無事に患者さんの命が救われますように…

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◆繰上げ当選◆

さらに翌々月、繰り上げで最終候補者に選ばれたそうです。やったぁ!
一度は白紙に戻ったのであきらめていたこともあり、今更ながらにドキドキとワクワクで興奮しています。家族と職場のみなさま、負担かけて申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

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◆最終合意面談◆

さらに数週間後、最終合意面談。家内と立ち合い者、コーディネーターと医師で2時間。
 「あなた、3000から10000分の1の確率で死ぬんですよ?」とずいぶん脅された。

◆採取前最終診断◆

またまた翌月、採取前最終診断があり、この先のスケジュールがほぼ決まった。

◆第一回自己血採血◆

さらに数週間後、麻酔科受診および、第一回自己血採取。麻酔科の先生と面談。麻酔薬はプロポフォールという薬を使うとの事。マイケルジャクソンで一躍有名になった薬品です。すべては麻酔下で行われるので採取自体の痛みはないみたい。尿道カテーテルを抜くのが一番痛そう…ううう…想像するだけで縮み上がる。
 今回、レシピエントさん(提供を受ける側の方)の体重から割り出した骨髄液採取量は約825cc。貧血予防のため予め採血し、冷蔵保存、当日自己血輸血というものを行うそうです。

◆第二回自己血採血◆

 そしてさらに数週間後、第二回自己血採取。前回は400cc、今回は200cc。前回の貯血を見せてもらった。4℃で保存するらしい。この温度が一番鮮度が保てるんだって。たしか水の比重の一番重くなるのが4℃だったけど、何か関係あるのかな?

◆ Point of No Return ◆

そして月末、いよいよ一週間前。レシピエントさんは前処置に入ったらしい。体内の造血作用を止めるので、もう後戻りはできない。風邪もひけない。これはなかなかのプレッシャーだ。マスクをつけて、うがい手洗いして乗り切るぞ!

◆入院の日◆

月が変わった。いよいよ明日だ。フルマスクの一週間、暑かった!これで無事終われば風邪も自由にひける!少し緊張。コーディネーターさんに付き添われ病室に。同室には白血病の患者さんもいた。来月末に移植を受ける、弁護士志望の立派な若者だ。寝る前まで色々話し込んだ。うまくいきますように。

◆手術当日◆

 9:00 開始。左手の甲に点滴を装着して麻酔薬を投入、びっくりするくらい、すぐに意識がなくなる。「びんさん!」と起こされたのは2時間後、全てが終わっていた。喉に若干の痛み。尿道カテーテルはいやだと言っていたので、せずに済ませてくれた。先生ありがとうございました。この骨髄液は、病院で待機してくださっていた、レシピエントさんが入院している病院の先生が持ち帰り、数時間後にはレシピエントさんに移植してくださったそうです。

◆手術翌日◆

 のどの痛みもなく、腰も重い感じはするものの痛みはない。運命の電話から約半年、全く無事に退院した。

◆一か月後◆

 術後検診。血液検査全く問題なし。傷も蚊に食われたような跡が二つ付いたくらい。なんだかむしろ寂しいような気もする。

◆すべてを終えて◆

 献血マニアの僕がたまたま登録していた骨髄バンクで、たまたま適合して、なんとなく同意、最後まで来ました。感傷や、崇高な博愛主義なんてものではなく、ただここまで来たのです。なんとなく。たまたま適合しちゃったから。えらいとかすごいと言われると、こそばゆい。 これを書くとそれこそ、威張ってるんじゃないか、かっこつけてるんじゃないかと思われそうですが、「ああ、アイツでもできるんだ!」と、1人でも多くの人がバンクに登録してくれればいいなあとの思いで綴りました。「たまたまなんとなく」の体験ですが、どこかの誰かの役に立ちますように。
最後に、血液内科のN先生、コーディネーターのHさんはじめ、丈夫に育ててくれた親父お袋、毎日の食事で健康に気をつけてくれてる家族、職場の皆さん、地域の皆さん、様々サポートしていただき、ありがとうございました。

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◆年末◆

感謝状が届きました、ありがとうございます。うれしかったですが、ここはコスト削減すべきかと思いました。

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