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#青春小説

2.物語の力

2.物語の力

1・2・3・4・5・6

高2の春、花見をしないかとアサミを誘った。
地元には竜が眠るという池があって、そこでわたしの作った不細工な団子をツマミにビールを飲んだ。
小さな子どもがわたしに近づいて話しかけた。心地よく回った酔いも手伝って、わたしは優しいお姉さんのようにその子に接していた。

予想だにしないことが起きた。
突然アサミはわたしの腕を引っ張り、狂ったように叫んだのだ。

「わたしのるんばに

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1.物語の力

1.物語の力

1・2・3・4・5・6

15歳のわたしは地元の進学校に通った。
その前の春に、苦くて濃厚な初恋を終わらせていた。
その後味のせいなのか、まともな高校生にはなれなかった。

高1の夏休みは、親に内緒のコンビニのアルバイトで作ったお金と、親の知らないプリペイドの携帯電話にすくわれた。
夜の密だけを吸う夜光虫のように過ごした。
その甘さに慣れた体には、9月の残暑はよけいに堪えた。

2学期にはいってす

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3.物語の力

3.物語の力

1・2・3・4・5・6

アサミとセンパイと、何人かで遊んだ、ある日の朝。

寝息が聞こえて目を覚ますと、目の前にアサミの顔があった。化粧の下の白い肌がやわらかそうで、りんごの一番おいしいところを切り取ったような紅い唇の奥には、白い歯が小さく子どもの様に顔を出していた。
さっきまでいたはずの男たちは姿が見えない。わたしはうすら寒くなり、人形のように可愛いアサミにくっついて寝ようとして、はっとした。

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4.物語の力

4.物語の力

1・2・3・4・5・6

その秋から冬のことは忘れられない。

きっと、世界を敵に抵抗した。
あの若さと情熱とエネルギーでもって、エベレストの
山頂で舞いたい一匹の蝶だった。

そして、たぶん、思い知るしかなかった。
じぶんが17歳だということを。

ここで出来る最大のことは、なんなのか。
どこまでもあのわたしは、最大出力の矛先だけを
かんがえていたんだ。



その秋からアサミから夜中にかかっ

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5.物語の力

5.物語の力

1・2・3・4・5・6

その日は、高熱を出して動けなくなった。

ふだん、38℃の熱があっても平気なのに
その日だけは ベッドから降りることも
水を飲むのも難しかった。

テレビを久しぶりに観た。お昼の有名司会者が
仕切る この番組がわたしは嫌いだった。
あそこに座っている人たちは、いつも後頭部しか見えない。後ろを向いて笑っているのを、しあわせでいいね、と興ざめして見た。

もうつかれた。
もう

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