京都議定書「第二約束期間」の存在を知っていますか?

学校の社会科の授業で習ったであろう「京都議定書」。

現在、地球温暖化の国際条約といえば「パリ協定」になりつつありますが、実は京都議定書は過去のものではなく現在もしっかりと意味をなしている存在なのです。

そして、こんなニュースが10月に入り飛び込んできました。

京都議定書ドーハ改正案、批准国出そろう。年末までに成立へ。京都議定書第二約束期間等の根拠明確に。同期間中の日本の温暖化対策の不十分さ、改めて浮き彫りに

この記事で述べられているように京都議定書には「第二約束期間」と呼ばれる期間が定められています。

今回は①京都議定書とはどんな条約か?②第二約束期間とは何か?、について簡単に解説します。

1. 京都議定書とはどんな条約か?

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ポイントは、2つあります。

①先進国に削減義務が発生したこと
京都議定書では、先進国に対して温室効果ガスの排出を1990年比で2008年〜2012年まで5年間一定数削減をする義務という法的な縛りが発生しました。
これは後述する「共通だが差異ある責任」論の結果とも言えます。

②市場経済の仕組みを使った削減方法が生み出されたこと
スライドにも書いてありますが、温室効果ガスの排出を削減するために「排出量取引」など市場経済の原理を利用した方法が用いられることが決定しました。
ということは、排出する主体は国ではなく企業なので、ここにビジネスの余地が生まれてきます。
環境ビジネスはこんなところからスタートしていたりします。

今回のニュースを理解する上で特に大事なのは①になります。

京都議定書のもととなる条約である気候変動枠組条約では、「共通だが差異ある責任」という考え方が用いられています。

「共通だが差異ある責任」
現在(気候変動枠組条約が結ばれた1992年当時)起こっている温暖化の原因は主に先進国だったので、まずは先進国が温室効果ガスの排出を削減しましょう、というものです。
この考え方が根本にあるため、新興国などを含む全ての国が削減をしなければならないという条約がなかなか結ばれなかったのです。

つまり、京都議定書においては先進国と途上国を区別し、温室効果ガス排出量削減の義務は、これまで排出してきた先進国が負うという内容になっていたのです。


2. 第二約束期間とは何か?

ここからは本題の京都議定書第二約束期間についてです。

京都議定書が採択されてから月日が流れると、先進国と途上国の一部(詳しくは後述)から「急速に排出量が増えている新興国(BRICSなど)の排出義務を課す京都議定書に変わる新条約を作成するべき」という論調が聞こえるようになります。

そこで2011年に南アフリカのダーバンで開催された会議で「2020年から京都議定書に替わる全ての国が参加する新たな法的枠組みをつくる」ことが決定されます。

さて、ここで問題になるのが京都議定書で先進国が削減義務を負う期限の2012年から新条約発効の2020年までの温室効果ガス削減をどうするかです。

この空白期間を「京都議定書 第二約束期間」として京都議定書を批准した国が引き続き温室効果ガス削減をするようにしようという議論が、今回ニュースにも登場した2012年のドーハ会議で「ドーハ改正案」として決定されます。

【2012年に議論されたドーハ改正案がなぜ今動き出したのか?】
 同議定書改正案は、発効に必要な締約国(192か国)の4分の3(144か国)の批准が必要で、これまで成立が遅れていた。また2015年のパリ協定で2030年を前提とした国別温暖化対策貢献(NDCs)を先進・途上の両国が約束するなど、2020年を超えた対応がすでに定められていることから、ドーハ改正の実質的な意義は少なくなっていた。
 ところがこのほど、ジャマイカとナイジェリアが相次いで批准をした。このため賛成国は144か国に達した。改正案は参加受理から90日以内に発行する手順であり、年末までに同改正が成立する見通しとなった。

第二約束期間は実際にはかなり実効性の低いものになってしまったと評価されています。
世界最大の排出国であるアメリカが議定書を批准せず、日本も第二約束期間には不参加であったことが原因です。

ちなみに日本が第二約束期間を認めなかった理由は、2011年の東日本大震災を受けて、日本の主要エネルギー源であった原子力発電を停止せざるを得なくなり、一時的に石炭火力などの化石燃料ベースの電源が増えるエネルギー政策になることが見込まれていたからと言われています。

日本を代表する歴史ある街「京都」で締結された国際条約において存在感を発揮できなかった日本。
パリ協定下においては是非環境政策をリードできるよう積極性を見せて欲しいと願っています。

※参考記事

・京都議定書ドーハ改正案、批准国出そろう。年末までに成立へ。京都議定書第二約束期間等の根拠明確に。同期間中の日本の温暖化対策の不十分さ、改めて浮き彫りに

・Ratification of Multilateral Climate Agreement Gives Boost to Delivering Agreed Climate Pledges and to Tackling Climate Change

・Nigeria, Jamaica bring closure to the Kyoto Protocol era, in last-minute dash
https://www.climatechangenews.com/2020/10/02/nigeria-jamaica-bring-closure-kyoto-protocol-era-last-minute-dash/