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【観た/2024年10本目】映画「コット、はじまりの夏」観ました。


【感想】
美しい自然と、静かな感情の交感が豊かな情景を見事に導く、控えめにも大傑作!

まずストーリー。
まずなんと言っても素晴らしいのは台詞の数と研ぎ澄まされ方。
説明過多をギリギリまで抑え、それでいて必要な感情は染み出してくる、絶妙な言葉のセンス。
ト書きに書き込まれているだろう、例えばちょっとした手の動き一つ一つも非常に精密。
言語表現と非言語表現、どちらの良さも十分引き出された十分すぎる脚本です。

次に演出だったり演技だったり。
すべてのシーン、丁寧に、大切にカットしたのだと感じる誠実な演出。
あえてだと思う、スタンダードサイズでの撮影も素晴らしい。
光の描写、緑の濃さ、水の反射、建物にも映し出される家族の風景。。
すべてに意味のあるシークエンス、眼福でした。

演技は主演のキャサリン・クリンチさんが素晴らしすぎて、、、。

たたずむ、走る。
うつむく、前を見る。
ただこれだけでこれほど多彩で細やかな演技。
天才子役なんてありきたりな言葉では収まらない才気。
この発見だけでのこの映画を見る価値ありです。

もちろん、周りの大人たちの演技も素晴らしい。
母性や父性、家族の有り様の難しさを的確に演じ分けていく技術力。
引き算の演技が求められるなかでもなおこの作品にかける思いが伝わってくる、熱量の高さ。

本当にこの家族がそこにいるように見える。
監督と役者の見事なコンビネーション。
これもまた幸せな体験でした。

さてさて。

家族の風景はいつの時代も難しく、もどかしく。
経済的な現実の前にネグレクトは常に紙一重で。
それでも子供に優しさの光を求め、
それ故に大人は与える光の細さに悩み苦しむ。

スコットランドの情景を包んでいた光は、紛れもなく優しさ。
優しさを忘れなければ、きっと、どんなことが起きても、一緒にいられる。

親世代、とりわけ「父親」には厳しい問いが投げかけられるこの映画。

ラストのシーン。
走る少女の見た先の光景。
最後の台詞。

僕は希望と捉えたいと思います。

よい映画でした。
とてもよい映画でした。

【評価・つけるとすれば】
4.6です。

ちなみに
☆1 ・・・金返せ
☆2 ・・・DVDで十分
☆3 ・・・劇場で観る価値有り
☆4・・・・是非オススメ!
☆5・・・・生涯の名作!です

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